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クマのプーさん(その4) [文学]

詩作が得意だった作者のミルンは、子供向けの本であっても、
子供に全てわかるように、という執筆姿勢は取らず、自分の
好きな言葉遊びを多用している。
「クマのプーさん」シリーズを英語で読んでみると、
言葉のリズムや響きが尊重され、掛詞的やもじり、縁語といった
遊びがあちこちに散りばめられている。物語、というよりも
詩の本なのだった。

翻訳は不能、というか日本語に移すこと自体、無意味なのでは、
と思える部分が多い。そして英語圏の人々にとっては、
小さい子供は、分らなくても何となく楽しい、
少し成長すると、わかるところができてもっと楽しい、
そして、大人も十分に楽しめる、という書になったのである。

文章があまりよくわからない子供を
強く魅惑したもう一つの理由は、シェパードによる
挿絵のすばらしさだろうと思う。
挿絵の位置も、文章の中に溶け込むように配置されていて、
文の流れと一体化している点もみごとである。

さりげなく線描きされたプーさんやコブタやイーヨーが、
それぞれ、表情を持ち、物語の世界にしっかりと
呼吸している様子が素晴らしい(続く)。
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クマのプーさん(その3) [文学]

大学入学の時に購入した「The House At Pooh Corner」、
当時の自分の英語読解力が低かったこともあり、第一章の
本題の部分を読んだだけで、あまり面白くはないのでは、
と思ってしまったこと、それと先行する「Winnie the Pooh」を
先に読むべきでは、と感じたことなどから、せっかくなけなしの
お小遣いをはたいて、当時はかなり高価な原書を購入したのに、
読むのを止めてしまっていた。

今思えば、プーさんの英米諸国での根強い人気の秘密を知るためにも、
日本語訳を手にとってみるべきだったと思う。そうしてみてわかることが
どれほど多かったか、それを想像すると惜しかったな、と今にして
思うのである。高校生の頃は、原文を読む前に訳文をみてしまうことは、
ずるいこと、という摺り込みがあった。なんともくだらない、先入観である。
訳文を読んでから、原文を読み、訳に至る過程を検証することは
何よりの勉強になるのに・・・。

で、あれから半世紀近くにもなって、日本語訳に目を通してみることに。
してみて、思ったのは、訳文でも結構難しいなあ、ということ。
なんとも、ストーリーが追いにくい。
その理由の一つは、プーさんが詩人である、ということにあるようだ。
それもそのはず、作者のミルンは、この一連の書をまず、詩の本、
とイメージしてとりかかっている、というか先行して出版されたのが
『クリストファーロビンのうた』なのだった。
だから、物語本という体裁をもつこの「プー横町・・」でも、
プーさんは、ところどころで詩作し、すぐに披露しているため、
ストーリーが分断される。これが、日本語訳の読みにくさに
繋がっているように思える。(続く)


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クマのプーさん(その2) [文学]

日本人にとってのクマのプーさんのイメージは、
ディズニーのアニメからの影響が大きいのではないか、
という印象がある。私自身も、最近プーさんのことを
思い描こうとすると、大好きなフィギュアスケートで
羽生結弦の演技終了後、リンクに大量に投げ込まれる、
プーさんのぬいぐるみを思い出してしまうのである。

このぬいぐるみ、まさにディズニーのアニメで描かれる、
プーさんそのものの色、形をしているから。

1920年代半ばに、A・Aミルンが最初の一冊、
「Winnie the Pooh」を刊行したとき、挿絵を担当したのは
E・Hシェパードだったが、本文中に配された絵はすべて、
モノクロの線画だった。彼がフルカラー版のプーさん
を手掛けたのは、ようやく1970年、亡くなる数年前に
なってからのこと。プーさんの毛は淡い黄色に染められ、
小さな赤いベストを着せられた。ディズニーのアニメ版では、
さらに鮮やかな黄色に彩られ、ベストの色も滑らかな光沢のある
赤に統一されるようになった。

でもプーさんは、作者ミルンの一人息子、クリストファー・ロビンに、
母親のダフネが買い与えたテディベア(J・Kファーネル社製)が
もとになって生まれているので、色彩は地味な灰褐色である。
プーさんにベストを着せたのは、挿絵担当のシェパードだが、
寒い季節の外出の時に着ているだけだった。
あの美しい黄色と赤は、初期のプーさんの本からは想像できない。

ディズニーの力は大きい。プーさんが好き、とは言いながら、
その本自体は読んでいない、と言う人も日本人には多そうな
気がする。(続く)
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クマのプーさん [文学]

クマのプーさん展に関する記事が新聞に掲載されていたのを
目にして自分の書棚を探してみることに。あった、あった。
大学入学の時に、紀伊国屋書店の洋書部で購入した
『プー横町にたった家』の原書『THE HOUSE AT POOH CORNER』
である。当時は1ドルが360円だった時代、洋書はとても高価だった。
それでも購入したのは、好きな児童書を、原書で読む、ということが
中学生の頃からの憧れであり、目標だったからである。

プーのお話にそれほど詳しかったわけではなく、表紙の美しさなど
にも影響されて、購入したのだと思うが。第一章の、まさに
プーが仲間のイーヨーのために家を建ててあげる、と言う部分だけを
読んで、そのまま長いこと書棚にしまい込んだままだったのである。
私はクリストファー・ロビンがもっと活躍する、と思っていたのに、
わき役程度しか出てこないことに当時は大いに不満だった。
プーさんが主人公なんだからそれは当然のはずだったのだが・・・。

今読んでみるとなかなか、面白い。特にプーさんやコブタやイーヨーらの
会話に、不思議な味がある。多くが英語ならではのもの、
こういう部分、石井桃子氏はどう訳されたのだろう、という興味も湧く。
                (続きます)

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映画 「ロープ」  [映画]

少し前にWOWOWで放映されていた映画を録画しておいたもの。
確か「戦場の生命線」とかいう副題(日本向け、だろう)がついていた。
制作はスペイン。舞台は1995年、停戦直後のバルカン半島である。

むらの生命線ともいえる井戸に、死体が投げ込まれ、生活用水が
汚染されている状況を、打開しようと五人の国際援助隊が
奮闘する。国籍も異なる五人は、井戸の死体をロープで括り、
ジャッキにつないで引き上げようとするが、何と途中で
ロープは切れてしまい・・・。彼らはロープを入手しようと
奔走するのだが、停戦直後の地域の荒廃が、彼らの行く手を阻む。

たった一本のロープも入手できない、ということは
つまり、戦争と言うものの悲惨さの比喩でもあるのだけれど。

彼らは地域の子供たちから疎んじられているらしい少年に出会い、
彼の救出を兼ねて、村の案内人役に引き立てることにする。
何しろ村の誰も話せない、英語を話すからだ(ちょっと違和があるが)。
さらに少年は救助隊に
「あれ(井戸への遺体投棄)は、水を売りたい人がやった謀略だ」
と指摘する。賢い少年なのだった。

彼は自分の家に犬がいること、その犬を繋いでいるロープを
使えばいい、という。救助隊は早速少年の家を目指すのだが・・。

そこからの展開が衝撃的だ。WOWOWの番組説明では
「コミカルに描いている」とあったが、もう、ブラックユーモアの
域を超えている。少年の両親は、敵対する民族同士の結婚だった
ため、戦時は地域から憎悪の眼で見られたらしい。家財は徹底的に
破壊され、壁一杯に呪いの言葉まで記されていた。そして・・・。

ここからは、ちょっと書けない。戦争の悲惨さに多寡など
ないと思うが、内戦はとりわけ悲惨なのでは、と想像する。
彼らはようやくロープを入手するのだが、それがどういう
ロープだったか、そのことが、この映画の、しずかな、だが
能弁な「反戦意志」を表しているように思った。
多くの人に見てもらいたい、と思える映画だった。

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スーパー銭湯宿泊記(その5) [生活]

夕食に生ビールの中ジョッキを一杯飲んだだけで、
身体がふらっとしてしまい、その晩はそのまま部屋に
戻って、テレビをちらちらと見ただけで、寝てしまった。

翌朝、いつものように六時過ぎに起き、テレビ体操を
した後、朝風呂を浴びに行く。この銭湯は午前三時から
五時までが清掃時間として閉鎖されている。
七時少し前に入ると、もう何人か先客がいた。
朝日がまっすぐに差していて、とても気持ちがいい。
この建物の周りは、大きな国道が交差しているところで、
見晴らしがよくないのは残念だが。受付の有る七階の
西側からなら、きっと丹沢山塊が望めるところだ。

朝食はビュッフェスタイル。私はいつも洋食だけれど、
案の定、和食の方が充実している。クロワッサンに珈琲と
ヨーグルト、野菜サラダ、それに小さな冷ややっこ。
少し変な組み合わせの朝食になった。エレベータのところで
運動部に属しているらしい男子高校生の団体とすれ違う。

あれ、どこかに遠征にいくところだろうか。スーパー銭湯に
宿泊してからのお出かけなんて、ちょっと贅沢じゃないの?
と思ってから、高校生の修学旅行先がカナダとかオーストラリアも
珍しくない時代になっていることを思い出した。
(少しも贅沢じゃないよね。時間の節約にもなるんだろう)

そのあと少し部屋で休んで、十時にはチェックアウトする。
その前に、もう一度マッサージをと、思ったんだけれど、
十一時開業なんだって。ちょっと残念だった。
一泊旅行、のはずだが、帰路はいつものスーパーに寄ってお買い物、
お昼には自宅に到着。なんだか、ちょっと不思議な感覚の
一泊温泉旅行(?)ということになりました。(終わり)
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スーパー銭湯宿泊記(その4) [生活]

宿泊用の個室に入るために、一度受付に戻り、
鍵を受け取り、預けていた荷物を引き取って、個室の階へ移る。
以外に沢山の部屋があるが、想像していたように、各室の
面積はとても狭い。ツインベッドの部屋を予約していたのだが、
ベッド二つで部屋の床はほとんど見えない。翌朝、いつものように
ラジオ体操をしようとしたのだが、足は全くと言っていいほど
動かせる余地がなかった(笑い)。

少し休んだ後、レストランで夕食を摂る。
畳敷きの大きな部屋に、座卓の食卓と、椅子に腰かけられる
食卓とが並んでいて、選べる。奥の方には個室もあったが、
そちらは一杯、とのことだったので、大部屋を利用することに。

先回書いたように、メニューに品数はやや少なめ。
私は釜飯定食を頼んだのだが、これは運ばれてきてから、
卓上コンロの上で炊かれる、と言う方式になっていて、
なんと、30分もかかるんだった。知ってたら頼まなかったかも(?)

それで生ビールを頼んで、おつまみをちびちびと食べ、
相棒が頼んだ海鮮定食の小皿をもらったりして、時間を潰す。
「まあ、今日はゆっくりしに来たんだからさ」と、相棒。
そうだ、そうだったんだ。なんだか、あれこれと
先を急いでやらなければならないことが山積みだった
この二か月。少し、休めよ、と自分に言い聞かせる。
                      (続く)
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スーパー銭湯宿泊記(その3) [生活]

私はスーパー銭湯を利用するのは初めて。一方、
同行の相棒は他の同種の施設を利用した経験があるので、
今回のM銭湯についての、長所と短所を即座に指摘した。

長所は、マッサージ施設が充実していること。
タイ式、アモイ式、一般的なマッサージなど数種のほか、
韓国式あかすりなどもあり、料金も外の同種の施設とほぼ同じ。
この日は少し混んでいたが、三十分程待って、普通のマッサージ
四十分のコースを受けた。感じの良い女性整体師で、お値段は四千円ほど。

入館者には浴衣や作務衣などの貸し出しがあり、
女性用は何種類もあってそこから選べるようになっている。
若い女性たちはきれいな花柄の浴衣を選んでいて素敵だった。

この施設の短所は、入り口に靴箱がなく、小さな手提げに
靴を入れて、持ち歩かなければならないこと。さらに、
入館時に渡されたロッカーのカギは、入浴施設用のもので、
とても小さい。冬はコートなど嵩張る衣料で来館する人も
多いはず。このロッカーでは荷物が入りきらないのでは。

私達は宿泊利用としてきたので、受付で荷物を預かってもらえたが、
日帰りの人は、入浴しようとした時点で初めてロッカーの
小ささに気がつくのでは。その時点で、受付(階がちがう)
まで戻って、となるとものすごく不便だ。ロッカーの数は
ここまで必要なの?と思われるほど多いので、数を減らして、
一人当たりの利用できる部分を広くすべきなのではないか。

レストランの料理の数も、少なめに感じる。
好きな料理だけを選んで、その皿数で支払いをする、
というカフェテリア方式も利用できるが、そこにある
料理は唐揚げとか、サラダとか、どこにでもあるような料理
ばかりで物足りない。入浴施設とはいえ、食の楽しみは、
もっと充実するように努めるべきなのではないだろうか。

休憩室はリクライニングシートがあり、各席にテレビが
備えられているが、数が少なくて、ほぼ満席だったので
私達は利用しなかった。マッサージを終えると四時半。
いよいよ、宿泊用の個室へ移るため、受付に鍵を受け取りに行く。
                     (続く)

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スーパー銭湯宿泊記(その2) [生活]

このスーパー銭湯Mは、我が家の近くも
無料送迎バスが運行されていて、時々見かけるのだが、
いつ見ても、中型のマイクロバス一杯に人が乗っていて、
かなり流行っているんだな、という印象があった。

我が家から車で十分ほどの距離なので、出かけるのは
車を使うことにする。宿泊客は、宿泊の日は全館
自由に利用できるが、宿泊用の個室に入れるのは午後五時から。
ちなみに、朝食込みの宿泊料金は平日八千数百円。
昼食まで銭湯のレストランを使うのはどうかな、と思い、
昼食を終え一時半ころに我が家を出発することにした。

駐車場は三割くらい空いていたが、受付はかなり混んでいる。
初めてなので、タオルやパジャマまで持ち込んだのだが、
それらはすべて、用意されていて、必要なかった。
ロッカーのカギをもらって、さっそく最初の入浴を経験することに。

お風呂は、男女同じ大きさで、ちょっとほっとする。
平日は女性の客の方が多いんだしね。ちなみにこのMは、
東名高速に近いところにあり、なんとなく、大型ダンプの
運転手さんなどが、宿泊や休憩に利用するのでは、という
印象があったのだが、夜になってもあまりそういう感じの人は
見かけられず。春休みだから、だろうか、家族連れや
若い友人同士らしいグループ、カップルなどが多かった(続けます)。

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