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折々の俳人・神野紗希 [文学]

句集はかなり持っている方だと思う。「現代俳句の世界」全16巻、
等の他、橋本多佳子全句集、山頭火句集、寺山修司全句集、
勿論、芭蕉、蕪村などもいろいろと身近に置いている。
のだが、のめり込むように読む、ということはこれまで
なかった。歌集なら一冊読み始めたら、読み終るまで
手放せない、ということは多々あるが、句集にはなかった。
少し読んで、置いておく。また気が向くと読む、という感じ。

いつだったか、栗木京子さんが「歌ができなかったとき、
句集から題材を拾ったりしていた」と、どこかで話されていたので、
私もやってみようと試みたこともあった。
だが、これまで手に取った句集から創作的な感情が刺激されると
いうこともほとんど起きなかったのである、不幸なことに。

ところが。半年ほど前、図書館で見つけた句集『すみれそよぐ』。
作者は神野紗希氏。奥付の略歴によると、1983年松山市の生まれ。
俳句甲子園をきっかけに句作に携わるようになり、お若いのに
この『すみれ‥』が第三句集なのだそうだ。と、思い出した。
この句集を手に取る時、何となく名前に見覚えがあったような気がしたが。
先月まで電子購読していた山形新聞の、詩歌の時評を担当されていた
方だった。なかなか面白い文章を書かれていた、と思い出したのだ。

詠み始め、そして初めて一冊の歌集を一気読みすることになった。
面白い、感覚が合う、という気がした。先行の第一、第二句集も
読んでみたい、と思い、ネットで探してみたのだが、もう入手不能、
になっているみたいだった。

ぴたり、と心に添ってくるような作風に感動しながら、印をつけた作品
は次のような句である。

  摘む駆ける吹く寝転がる水温む
  おーいつばめ切株に置く旅かばん
  女子大やTシャツめくり臍扇ぐ
  ひかりからかたちへもどる独楽ひとつ
  花筏光になりたくて急ぐ
  汝にわれ樹に囀のある限り
  新妻が風ごと振り返る 虹よ
     神野紗希『すみれそよぐ』


他にもひかれた作品がたくさんあった。
なぜこんなに魅力的に思えたんだろう、と思うと同時に、
読んできた句集にさほど惹かれなかったのはなぜなんだろう、
と考えている。
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