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米坂線(その3) [旅]

6歳の頃からだと記憶するが、ものの名前について興味を持つようになった。
この頃から少女漫画に没頭するようになり、登場する女の子の名前が気に
なるようになったのが、そもそもの始まりだったようだが。

米坂線の駅名についても然り。母の実家へ里帰りする途中で通る駅名に
突然姓がついたように、羽前松岡。羽前沼沢、羽前小松、などという
名前が登場する。父の郷里の新潟へ向かう時は越後金丸、越後片貝、
越後下関・・・となる。この「羽前」と「越後」とはなんだろう?

母に聞くと「羽前は古い山形の地名、越後もやはり、古い新潟の地名」
とのことだった。なぜ、その古名がつく駅と付かない駅があるのか?
秋田のことを羽後、と言い、富山を越中というらしいが、何に対する、
前、中、後ろ、なんだろう、と疑問は次々に沸いたが、母が酷く
私をうるさがる様子なので、黙ってしまった記憶もある。

米坂線という路線名は、米沢と坂町を結ぶからだ、と知った時は
なんだかとても気持ち良く感じたたことも覚えている。分かり易かった
からだろう。それから間もなく、母の実家を訪ねた時、街の中心部に
「おめでとう、天童市」という横断幕が出ているのに気づき、この時は
母が機嫌が良さそうなので、早速質問した。「なにがおめでとう、なの?」
母は嬉しそうに言った。「天童はこれまで町だったけど、今年から市に
格上げされたのよ」そして、町と市の違いを説明してくれたのだった。

そこで私はあることが気になった。父の郷里に向かう途中に降りる駅、
つまり米坂線の終点だが、「坂町」は、市になったらどうするんだろう。
坂町市、だろうか、坂市、だろうか。母に聞くと、急にめんどくさそうに
「坂町は、市にはならない」ときっぱり言った。

私はこのこともすごく不思議だった。なぜ母は、こんなに簡単に断言できる
のだろう。いつか坂町も人口が増えて、町から市になる日が来るかも
知れないのに・・・。
坂町とは、当時の新潟県岩船郡荒川町のなかの地名であると知ったのは
それから随分後のことである。駅名は市町村名とはまた別につけられる
こともあるのだ、と知った。米坂線は私にとって、不思議の宝庫だった。
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