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ペルー旅物語(その10) [旅]

ガハマルカに到着したのは午前八時頃。バスターミナルに、ソフィアの
弟が迎えに来てくれていて、彼らは走り寄って抱き合い、交互に頬にキスし合って
いて、ちょっと驚く。ラテン系の家族は、日本人にはちょっと照れくさいくらいの
親密さを保っているのだった。

ソフイアの弟が伯父さん一家と暮らす家は、中庭を囲む大きな家で、
伯父さん夫婦は公務員で共働きだそうで、若いお手伝いの女性も同居していた。
夫婦は朝早く出勤するが、お昼には帰宅して家族で昼食を取り、お昼寝(シェスタ)
時間の後、二時半頃にもう一度出勤する。ソフイアの従姉に当たる、二十歳前後の
娘さん二人がいるが、学生なんだろうか、定時に出かけるということはなかった。

泊めてくれたお礼に家族みんなを食事に誘おうとしたのだが、これは
伯父さんからきっぱりと断られた。するとしっかり者とみえる伯母さんから
「クイをご馳走したい。その代金をそちらでもってくれたらいい」との
提案があった。クイはペルー北部に特有の食糧で、実は日本で言う、
モルモットである(ちなみに、英語ではモルモットは別の動物。誤訳のまま
日本語化してしまっていて、英語で正しくはguinea pig という)。つまり、
ねずみの一種を食べるということになる(最初はちょっとぞっとした)。

町はずれでクイの市が立つ日があるという。その日は伯父さんを除く全家族で
市場へでかけた。先住民らしい人たちが大きな布袋を背負ってきている。
彼らと一対一で交渉する。袋の中の個体を確認し、値段の交渉をするのは
伯母さん。小型の兎くらいで、見た目は耳のない兎、みたいな雰囲気の動物。

値段は一匹25ドルだったから、当時の日本円では2匹で一万円近くもする。
ペルーの人には高級料理なのだった。伯母さんが調理してくれたが、クイの
可食部分は少なく、少しずつ分け合うような感じになった。でも、
みんな「今日はクイの日!」と目を輝かせていて、ソフイアの従姉たちが
骨を長くしゃぶり続けていたことを覚えているのである。
クイは、少し皮の硬い鶏肉、といった食感と味だった。
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