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婚約者の友人 [映画]

ほとんどモノクロ+一部カラーという少し珍しい映画。
舞台は第一次世界大戦終結直後、1910年代末期のドイツ。
フランスで戦死したフランツの婚約者アンナと、フランツの両親は
互いを慰め合いながら同居している。いつものようにフランツの墓を
訪れたアンナは、墓前で泣いているフランス青年・アドリアンを知る。
戦前、フランツがパリに留学をしていた頃の友人と思い込んだアンナは
フランツの両親にアドリアンを引き合わせる。

フランツと同じく音楽を愛し、繊細で美しく、何か謎を秘めた存在である
アドリアンに、アンナは少しずつ心を寄せていく。両親もアドリアンに
心を癒されるようになり、アンナの恋の成就を密かに応援するようになる。

だが、アドリアンにはやはり、大きな秘密があった。アンナがアドリアンに
思いを深め始めた頃、アドリアンは、自ら秘密を告白し、パリへ去っていく。

この映画はミステリと言う訳ではないが、この秘密を最初から
知って観るより、知らないままに見た方が、面白いと思うので、ここで
秘密の内実には触れない。それまで、フランツとの思い出だけに生きていた
アンナが、アドリアンの秘密を知ってから、苦悩し、やがて、
一人の女性として自分の生き方を選択しようとしているさまは、
力強くて、この映画の一つのテーマになっている。
もう一つのテーマは、当然ながら、反戦である。

アドリアンが、フランツの演奏するヴァイオリンの指を正してやる
場面や、ルーブル美術館を案内し、彼が好きだったというマネの
絵の前に導いていく場面などは(実はアドリアンの幻想なのだが)
戦争などと言う悲惨な出来事が起きなければ、交わされていたかもしれない
二人の友情の場面として、とても美しい。この映画はドイツの
フランスへの憧れも込められているようで、このあたりも見所である。

ところで冒頭に紹介したように、この映画は大部分がモノクロ、
そしてほんの一部、たぶん主演者の心が高揚した時だけ、カラーと
してあるのだけれども、あまり効果的のように思えなかった。
普通に過去の出来事をモノクロ、現在をカラーにしても
良かったかな、と思うのだが。
最後は、アンナがルーブル美術館内の、マネの絵の前に
立つところで終わっている。ちなみにその絵は「自殺者」という
絵で、私の持っている「現代世界美術全集1 マネ」(集英社)
にも載っていた。かなり衝撃的な絵である。
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