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作歌の現場 [短歌]

私が所属している「塔短歌会」の今年の四月号は、七十周年記念号で
あることは、先日記した通り。記念号には決まって、会員エッセイ欄が
設けられ、会員が自由に投稿できる。ただし、お題は決まっていて、
今回は「わたしの最初に載った一首」「わたしが塔に入った頃」
「わたしの作歌現場」の三種類から一つ選んで書く、となっていた。

一番多かったのが最初のテーマで、みんな自分の最初の歌には、
拘りがあるのだろう。私は、今回のテーマでは、三つ目の「作歌現場」で
みんながどんなことを語っているのか、興味を抱いたのだが。
ざっと読んでみて、具体的にどんな場所で、どういった方法で作歌しているか、
記している人は少なく、ちょっと落胆した。企業秘密、かな。それとも
まともにこの題に取り組んでも、あまり面白い内容にならない、と踏まれたか。


この連休、家でごろごろする時間があったので、相変わらず積読のままに
なっている短歌関係の本を何冊か読んだ。その一冊が『シリーズ 牧水賞の
歌人たちⅥ 小島ゆかり』である。随分前に購入していて、読みたいと切実に
思っていたのに、なんだかんだとあって、つい忘れていました。それで
のめり込むように読んだ。小島さんの大好きな歌を次々に思い出しながら。

実に粒のそろった、詩性の高い作品を次々に出している彼女、どんなふうに
作歌しているんだろうと、興味を持っていたので、伊藤一彦氏との対談も
食い入るように読みました。さて、彼女の作歌現場は・・・。

  伊藤 歌はだいたい、どんな場所で作られるんですか?
  小島 いろんな場所で。
  伊藤 決まった場所はない
  小島 ないですね。

ああ、そうなのか~、と落胆する。では、どんなふうに作歌されているのか。

  伊藤 短歌の草稿ノートというのか、それは手帳ですか。
  小島 ・・・リズムを伴って言葉が出だしたら、ノートとか紙に・・・
  伊藤 それは決まったノート。
  小島 ノートだったり、紙だったり、いろいろ。

あれれ、とかなり驚く。う~む。混沌から湧いてくるって感じか。
ただ、やっぱ、この後が凄い。

  小島 十首まではたいへんですけど、十首超えるとわりと二十首はいく。
     二十首超えると、また二十五首はたいへんだけど、二十五首超え
     ると三十首は行くとかね。そういう感じですかね。

私は十首を超えると、もういいや、という感じになり、その先を追及しよう
とは思わなくなってしまう。歌数ももうこのあたりで足りる、とか、
思ってしまい、しばらく歌を寝かせる方が大切だ、なんて、合理化しちゃう。
歌を作るには、助走時間が長い方なので、乗り始めたら、やはり、もう少し
粘らなくちゃならないよな、なんて考えたことでした。でも、この対談で、
一番羨ましかったのは

 小島 私の体力とか、すぐに前向きになれる気持ちとか、そういうのを
    授けてくれた両親にはとても感謝しているんですよね。
    小さいときにほんとうに、もうこれ以上ないくらいに愛された
    実感が強くあります。
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