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米沢・半世紀(その5) [旅]

山形県は一人当りのラーメン消費量が日本一、米沢もまた、ラーメンの
おいしい町。それで米沢での二日目の昼食は、ラーメンにしようと
話合っていた。Yさんの友人Kさんも一緒に、地元で評判のラーメン店へ。
スープは鶏ガラ+かつおだし。定番の焼き豚のかわり、
こちらは煮豚、メンマのかわり、ゆでタケノコが添えられている。
想像していたよりあっさりとした味で、なかなか美味だった。
半世紀前、米沢を発つ日に私が食べたのも、駅の食堂でのラーメンだった。
気がつくと、思い出も一緒に食べている・・・。

午後は、Yさんの出身地川西町に出かける予定を立てていた。川西町といえば、
劇作家、井上ひさしの出身地で、その縁から「遅筆堂」という施設が
あるということは知っていた。Yさんの友人のK氏がここの館長さんとのこと。
私が『魔女図鑑』の訳者であると知って、来館を楽しみにしてくれている、
と聞いて、私もとても楽しみだったのだが・・・。

井上ひさし・・・・実はあまり読んでない。
古い読書ノートを捲ると『私家版 日本語文法』についてのメモが残っていた。
「日本語を語りながら、日本民族の特徴を探る優れ技」とか、書いてある。
もう四十年近くも前のことだった。この後、『吉里吉里人』を読みかけて・・・。
う~ん、長すぎて読了できないままだった記憶がある。

「遅筆堂」は素晴らしい場所だった。とにかく井上ひさしの寄贈図書が凄い。
およそ七万冊。それが何か所かに分けて保存してある。入り口近くに備えられた
「本の樹」という高い書棚にも圧倒される。これは図書館利用者が自分の読了した
井上ひさしの著作の寄贈書が収められている。一定の展示を経て、その後は
学校図書館などで利用されるのだそうだ。

井上ひさしからの寄贈書は、図書室に収まりきらず、大型の可動書棚を
収めた倉庫にびっしりと収納されていた。「樋口一葉」「シェークスピア」
などなど、井上氏が取り組んだテーマに沿って、綺麗に分類されていて
ひとつの仕事に取り組むためにいかに大量の資料にあたったのかが、
一目瞭然だった。各書にはびっしりと長めのポストイットが挟み込まれ、
それぞれに、彼らしい独特の丸文字で書き込みがしてある。
頁のところどころに赤線も引いてあり、彼の興味を引いた部分が、
これまた明瞭にうかがえる、一冊一冊が井上ひさし、の足跡と
なっていたのだった。倉庫の中まで案内してくださり、丁寧に説明して
くださったEさんに、感謝したい。
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