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文章を書いてきて [文学]

私は文字を覚えたのはかなり遅い方だった。
自分の名前を平仮名で書けるようになったのは
小学校入学直前の頃だったし、五十音が読めるようになったのも
入学直前に「平仮名の積み木」を買ってもらってからだった。

三月になるといつも、母の実家に泊りにいっていたが、
入学間際なのに、五十音がほとんど読めない、と知った祖母が
近くの玩具店に連れて行ってくれて、「平仮名の積み木」を
買ってくれたのだった。これは五センチ四方、厚さ一センチくらいの
板状のもので、積み木、と呼んでいたが、積んで遊んだ記憶が
ないし、積み木というには、薄すぎたような記憶がある。
文字を覚えるための、教育玩具の一つだろう。

板は五十個あって、表面に一つずつ絵が描いてある。
たとえば、犬の絵が描いてある板は、裏返すと大きく一文字、
「い」と書いてある。これが私のお気に入りになり、
私はすぐに平仮名を覚えて、なんとか入学に間に合った。

文章を書くのも好きになった。一年生の時の担任の先生は、
若い女の先生だったが、みんなに自由に文章を書かせてくれ、
いつも赤いペンでコメントを書いてくれた。先生は字も、絵も
素晴らしく上手で、時々、綺麗な花丸もつけてくれた。
これが嬉しくて、私は、好き勝手に文章を書いては見せに行ったりしていた。

二年生になると間もなくの頃、先生が
「史さんは、児童文学を読んだり書いたりする仕事が
向いていると思うわ」と仰ったのだ。
具体的にどういうことをするのかよくわからずに、
うなずいたことを覚えている。(この項、続けます)

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