SSブログ

ある暴言 [言葉]

某牛丼店をチェーン展開している企業の企画本部長の
ある大学の社会人向け講座での発言が、ニュースで流れたのは
今年の四月のことだった。私は先に「SNSで大炎上している」と
耳にし、次いでNHKニュースでその内容に触れることになったのだが。

その時は、「え?」と少々疑問だった。するとそばで聞いていた相棒が
「NHKだから、放送倫理上、使えない言葉があるんだ、
こんな生易しい表現じゃなかった。あれは、絶対に許されない!」
と強い口調で言う。その後、スマホで、実際の発言内容を知った。
耳を疑い、深く落胆し、やがて、憤怒の感情が湧いてきた。

「田舎出の生娘を、東も西もわからないうちに、シャブ漬けにする」
とは、いったい・・。これが、世界に展開する大手企業のリーダーが、
少なくとも数十人は出席していたであろう、大学の講座で、
マーケティング論の一部として発言するとは・・・。

件のチェーン店は、我が家の徒歩圏内にもあり、私は一度だけだが、
利用したことがある。相棒の方は、私が歌会などで留守になる折、
たぶん、一か月に一度位だが、利用していたみたいである。
この店舗に直接責任はないとはいえ、イメージが悪すぎる、もう
絶対に行くもんか、と心に誓った。相棒もその後は行ってないようだ。

あれから三か月余り経って、少し冷静に考えて見る気持ちになった。
この発言者にいささかの同情できる余地があるとしたら・・・。

第一に、一部の人が出席していた講座内で、つまり閉鎖空間での
発言だったこと。場を盛り上げるため、ちょっとした冗談として
軽い気持ちで発してしまったのかも。でも今は、どんな場面で
あったとしても、SNSで拡散される可能性がある。認識が甘すぎる。

第二に、外資系(米国)の企業に就いていて、国外での暮らしが
長かったらしいこと。英語には「mainline」という言葉があり、
普通は幹線とか、主線、という意味だが、米語の俗語として
「静脈に(麻薬を)注射する」というような意味でも使われる。
そして、ビジネスの世界では結構頻繁に、「消費者をある商品に
心酔させる(戦略)」というような、比喩として使われているようだ。
この発言者は当然このことを知っていて、ついそのまま和訳して
つかってしまったのではないだろうか。

でも、日本では言葉の感覚が全く異なってくる。あまりにも反社会的で
たとえ比喩だとしても、決して受容される言葉ではない。
長い国外生活で、マヒしてしまっていたのか。

発言者の側に立って、そう推測しようとしても、「田舎出の生娘」
という部分は決定的だ。この言葉が、決して、国外生活で言語感覚が
麻痺していた、とは言わせない。日本社会に根強い女性軽視・蔑視の
感覚を鮮明に吐露しているからである。長い、欧米での生活で、
いったい、何を学んだのだろう。
nice!(0)  コメント(0)