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蓮根デザート [食文化]

上海で二か月ほど暮らしていた時のこと。
借りていたアパートの近くに小さな市場があり、
よく利用していたのだが、市場の客を目当てにした小さな屋台が
いくつか出ていた。その中に何やらおいしそうなお菓子らしいものを
切り分けて売っている同じような屋台が何件かあった。
屋台の前には、いずれも「藕」の文字を用いた熟語が見える。
調べてみると、藕は蓮根のことを指すのだった。

中国では蓮根はさまざまな料理に用いるが、とりわけ
デザートに仕立てられることが多い、と知って驚いた。
日本ではちょっと思いつかない。どんな味なんだろうと興味がわくが
屋台で購入することには、ちょっと度胸がいる。
少々、衛生的な面で不安もあるし・・・。

そこで上海の知人が夕食に誘ってくれた時に聞いてみた。
すると、蓮根のデザートの種類を色々教えてくれた。
甘酢あんをかけた糖醋蓮藕。蓮根の細切りを湯通しして
蒸した卵白の上にゼリー状の果汁やシロップをかけた藕絲羹など。
特に上海付近では、蓮根の穴にもち米を詰めてとろ火で煮込み、
薄切りにして砂糖をかける醋桂花糖藕が有名で、屋台で売っているのも、
そのたぐいのお菓子なのだとか。

ちょうど入ったお店にその桂花糖藕があったので、注文する。
食べてみると、とろりとした甘い餅の味と、シロップのとろみとが絶妙で、
蓮根を食べているという感覚は薄いものだった。
中国には美味なお菓子は少ない、という感覚があるのだが、
こういう料理を食べると、やはり食の国だな、と感心する。
お菓子と一般的な料理との境界があいまい、というか。
料理の豊かさの中に、お菓子が溶け込んでいる、という感じなのだ。
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