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二冊の写真集 [藝術]

加藤朋子『子ども大好き』(現代写真研究所刊)はお気に入りの本で、
時々手にしてはじっくりと眺めている。著者は1968年から1998年まで
東京の東久留米私立保育園に勤めていた保母さんで、ここで撮影した
写真をまとめたものらしい。なにしろ、子供の動きや表情が抜群だ。
生き生きしているし、大人には思いつかないような行動の瞬間が
実に巧みに切り取られている。

たとえば、食事の途中で眠ってしまっている一歳児とか
(口にも額にも、体中、そして食卓にもご飯がボロボロにこぼして)
たらいのお湯の中で、プールの後の暖を取る男児二人。
狭い容器に「卍」型に入り込んでいるところがユニーク!
他にも、ガラス越しに、表情で会話し合う女の子とか、
ベンチに寝そべる、疲れた昼休みのサラリーマン、みたいな男児とか・・・。

最近、図書館でウエィン・ミラー『子どもの瞬間』(福音館書店)
という写真集を見つけた。作者には四人の子供がいて、撮影対象は
主にこの子供たちだというが、子供の友人や学校仲間も沢山映っている。
原書は1958年にアメリカで出版されていて、作者は当時シカゴ在住。
なるほど、子供たちのファッションがいかにも50年代風である。

『子ども大好き』と比較すると、一番大きな違いは、このファッションに
あるように感じられる。アメリカの子供たちの着ている服が、いかにも
あか抜けていて、高級そうなのである。ジャングルジムで遊んでいる子が
ふわふわのワンピースに白い靴下、しゃれたカーデガンを着ているなんて!

拳銃遊びに興じる男の子たちはさすがにカジュアルな服装であるものの、
シャツもジーンズも、ぱりっとしていて、生地がしっかりしている感じ。
日本の子供の服がみんなよれよれで、安物っぽいのとは対照的である。
アメリカの比較的上流階級の子たちなんだろうな、とは思うものの・・・。
なかには、素晴らしく美しいドレスを母親らしい女性に着せてもらっている
七、八歳の女の子も映っていて、「いいなあ」とちょっと溜息(笑)。

『子ども大好き』に登場する子たちは、かなり庶民的である。
保育園も、ごみが散らかっているところまで、写っているし、
子どもたちもおへそ出しながら、シャツの裾で涙ぬぐっていたり。
ズボンのジッパーが満開のまま、指しゃぶりしていたり・・。

でも全体として、日本の子供の方が、ずっと遊び方に意外性と独創性が
あるように感じられた。撮影者がそういう場面を撮ろう、と努力したんだ、
と思うのだけれども。いずれ、何度見ても飽きない二冊ではある。
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