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ハトの災難 [生活]

用事があって出かけた帰り、家の近くの公園
(けっこう広い。ケヤキ、桜、百日紅、銀杏、などの樹木
も多く、野鳥も多い。以前にこの公園で子供たちが尾長の子を
捕獲していたことについても書いたことがある)を抜けて、
自宅のある住宅地の道路に入ったところで、
ハトが折れた枝の上にうずくまっているのに気がついた。

大きめのアオバトで、羽根がつやつやと光っている。
丸い目をキロキロと動かし、私が近づくと羽ばたこうとした。
だが、飛び立てない。ハトがうずくまっているのは、直径二センチ、
長さ一メートルくらいの葉のない枝で、どうやら、
足が引っかかってしまったらしい。さらに近づくと
匍匐前進の姿勢で、道の中央の方に逃れようとする。
飛び立ちたくても、枝の重さはこのハトの力量を越えるものらしい。
住宅地なので、通行量は少ないが、このままでは轢かれてしまうだろう。

そっと後ろに回って、ハトを驚かさないようにしながら、
足の様子を見ることにする。尾羽を持ち上げると、また
ばたばたと羽根を動かすが・・・。足はやはり枝に
引っかかっていたのだが、なんと、ハトの足には細い糸が
幾重にも絡んでいて、その糸が枝の突起した部分にかかっているのだ。
指で引きちぎろうとしたが、ものすごく強靭である。
こちらの指を痛めてしまいそうなほどに。これはいったい・・・。

と思っていると背後で男性の声がした。
「助けられそうですか?」
道路のそばの家の人が、心配そうにこちらを見ている。
「あ、たぶん・・。鋏、鋏があれば。お借りできますか?」
すると、さっと用意してきてくれた。

ハトの足指を切らないように、糸を切る位置を確かめる。
ハトはさらにバタバタと動く。そっと背中を抑えると、
驚くほど熱かった。もう、心臓がバクバクしているのだろう。

足に掛かっていそうな糸を全部まとめて一直線にし、
鋏を入れると、とたんに、ばっと、飛び立った。
直ぐ近くの屋根に下り立ち、首をかしげながらこちらを窺っている。
ハトには、何が起きたのかわからず、頭の中を整理しているみたいだ。
とりあえず、ほっとして、鋏を貸してくれた人にお礼を言う。

それにしても、その細い強靭な白糸は何だったんだろう。
自然界のあちこちに、こんな糸が落ちているとしたら・・。
ちょっとぞっとする。
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