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折々の作家・宮沢賢治(その3) [文学]

次に読んだ宮沢賢治の作品は「虔十公園林」だった。
繰り返し何度も読んだことを覚えている。手元に
置いていた本だと思うのだが、家に「賢治童話集」みたいな
本はなかったので、これも教科書に載っていたものかもしれない。

「虔十公園林」は賢治の著作ではあまり知られていないようだが、
新潮社「宮沢賢治童話集(下)」には収録されている。
少々、頭の回転ののろい青年虔十の描き方がすごくいい。
こういう人って、地方には必ず、一人や二人いたもんだ。
子どもたちにはからかわれたり、周囲の大人からは見下されたり。
でも、虔十は、家族からは愛されていた。そして、生涯に一度だけ
自分の望みを口にし、ただ一度だけ、人に逆らった。何度も
殴られもした。それでも自分の信念を貫き通すところが、なんともかっこいい。

賢治は「雨ニモ負ケズ」で、「みんなから馬鹿にされ、愛されず、
苦にもされず・・・」と書いているが、虔十には、賢治の、
自分が思い描くところの自画像が投影されているのかもしれない。

 「・・その虔十という人は少し足りないと私らはおもっていた
  のです。いつでもはあは笑っている人でした。…この杉も
  みんなその人が植えたのだそうです。全くたれが正しく、
  たれが賢くないかはわかりません。ただ十力の作用は不思議です。
  ここはいつでも子供たちの美しい公園地です。どうでしょう。
  ここに虔十公園林となづけて、いつまでもこの通り保存するようにしては」
             宮沢賢治「虔十公園林」
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