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折々の作家。宮沢賢治 [文学]

宮沢賢治との付き合いは、結構起伏に富んでいて、
そして豊かに、長いものになってしまっていた。
何しろ、最初は「絶対に好きにはならないだろう」という
妙な確信から始まってしまったのだから。

小学校三年生のとき、学校の映画教室で、賢治の伝記的な映画
「雨ニモ負ケズ」を見せられた。東北の貧しい農村のみじめな
暮しがそのまんま描き出されているような、なんとも重苦しい
映画で、たちまちうんざりしてしまったのだ。その頃の私は
ファンタジックな西洋の童話に夢中になり始めた頃だったし、
母は嫌がってなかなか買ってはくれなかったが、高橋真琴とか
内藤ルネなんかのデザイン画満載の少女雑誌が気が狂いそうなほど
欲しかった、なんともおセンチな小学生だったからである。

この映画の最後の場面はよく覚えている。賢治役の青年が
子どもたちを引き連れながら泥だらけの道を歩いていく。
その画面に「雨にも負けず、風にも負けず・・」という、
あの賢治の詩が画面にかぶさるように流れていく。

そんな意志の強い人間にはなれそうもない、と「へたれ」な
私は思った。賢治は、敬して遠ざけるべき、というようなことを
漠然と感じたことを覚えているのである。だが、しかし・・・。
            (この項、続けます)
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