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トゥモロー・ワールド [映画]

「もう、見る映画なくなっちゃったよ!」と、やや
投げやりに相棒が言い出したのは一昨日。WOWOWの
番組案内を見ながら、録画すべき作品がないのだそう。

何か一つくらい、まだ見ていない逸品があるかも・・。
と、探し出して録画しておいたのが昨日早朝に放映されていた
「トゥモロー・ワールド」監督はアルフォンソ・キュアロンだし、
もしかして・・・。と少しばかり期待していたのだが、これが
やっぱり、未鑑賞の逸品だった。

時は2027年、制作された2006年から見ると、「近未来」かも
しれないが、現在からはもう、つい明日のこと、だ。
人間は生殖能力を失い、もう18年も子供が生まれておらず。
世界で最も若い少年は、近づいた人に唾を吐いて殺されてしまい
(よほど、ちやほやされてたんだろう)、いよいよ、子供が一人も
いない世界になってしまう。場所はイギリス。
駅のフォームでは、不法移民を詰め込んだ大きな檻が
林立し、街中は生きることに絶望した人々に溢れかえっている。

治安の悪さに、軍と警察とが異様なほどの統制を敷き、
さらに人々の自暴自棄をあおるような状況。

そんななか、一人の若い女性が妊娠していることがわかり。
一筋の希望を見出した、エネルギー省の若い官僚が、彼女を
守るべく奔走する、といった展開なのだが。

筋にはいろいろ無理はあるかも知れないが、このところの
中東や中南米の政治不安や、それによって生まれる大量の移民、
移民による社会不安によって加速する自国主義、貿易摩擦、
そして先進国の出生率の大幅低下、高齢化問題などなど。

このトゥモローワールドは、もう明日というより、今に迫った
問題をそのまま映像化しているような迫力を持っていた。
とにかく、荒廃した街並み、そこで繰り広げられる、
軍や警察と、市民、移民たちとの攻防はすばらしく
リアルで、ときどき、息苦しくなりそうなほど。

原題は「Children of Men」、「人類の子供」である。
こっちの方が色々と含みが多くて魅力的なはずなのだが。
特に最後の場面、無事子供を産み終え、その子を守り切った女性が、
軍の銃撃を受けて、ボロボロに荒廃した建物から
降りてくる場面・・。赤子の泣き声が響き、銃声がやみ、
いかつい兵士たちが、ふっと頬を緩めながら女性に
通路を開けてやる場面が印象的だから。

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