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アマリリス [生活]

二月の下旬、ふっと気がついて郵便局に入った。
今まで一度も利用したことのない、我が家からかなり
離れている局で、用事をこなす途中に見つけたから。
小為替を購入して出ようとすると、壁際に
「ご自由にお持ちください」と張り紙があり、その下に、
大きな球根が十個ほど、紙函に入れておいてあった。
アマリリスの球根であるという。

正直、園芸は得意ではない。父も母も庭仕事が大好きで、
妹も野菜作りなどが好きなのに、私だけ、我が家では
異端だった。庭仕事は草むしりを(いやいや)やるだけ。

でも、アマリリスという言葉に惹かれた。子供の頃、
音楽の授業で教わった、あの「ラリラリラリラ~」という
歌詞が蘇ってきたのだ。一つだけ頂いてきて
庭の日当たりの良いところに埋めた。

しばらくすると、芽が出てあれよあれよという間に、
幅二センチ半くらいの太さの茎が、垂直に伸び始めた。
高さが四十センチくらいになったところで、先端が割れ、
薄いベージュ色に染まった花芽らしきものが見え・・・。

そして五月の中旬、そのベージュ色の花芽が八方に
割れるようにして、開いたのである。つまりアマリリスの
花が咲いた、と言うことだが、ふ~む。

何とも色彩が冴えない。ちょっとくすんだベージュ色に
これまたくすんだ赤色の線が入っている。
汚れたような色なのだった。

相棒が「ええ、これがあの、アマリリスなの?」と驚く。
ネットで検索してみても、こういう色のアマリリスは
どこにも出てこないのだが。

それでも直径十二、三センチはありそうな花は
存在感がある。百合のように放射線状に五個の花芽を
持ち、次々に開き始めた。茎がしっかりしているから、
五個の花も、支えられるのだろう、と思っていたら。

満開だったこの火曜日、首都圏は季節外れの嵐に襲われ、
一輪だけだが、あえなく首から落ちてしまっていた。
他の花も花びらがだいぶ傷んでしまった。でも、残る四輪は
今日現在、まだ頑張って、茎にしがみついている。そんな感じ。

長い間、歌でしか知らなかったアマリリスが目前で芽を出し、
花開いていく様を見られただけでも良かった、と思う。
実態はあまり美しくはなかったが、名前が綺麗だ。
なんて言ったって、「調べは、アマリリス~」だもんね。

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