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絵が売れる、とは [藝術]

いつも私が出かけるアトリエで、指導してくれるN先生。
六十代前半の女性である。アトリエに通っている生徒は、
子どもから受験生、主婦など。私は月に二、三度出かけるだけなので
よくわからないが、全体で四十数人、というところだろうか。
先生は、自分の絵は売れる、というようなものではない、
でも、一応、絵を教えることで自分の絵が描けるので、セミプロ、
と自称しておられる。

あるグループに所属していて、一年に一度、都心で
販売を兼ねた展示会も行っている、という。そのグループは、
先生の出身地である県に縁のある人たちだけで構成されているのだとか。

「代表になっている人の絵は、数十万でも売れるのよ。
毎年、買ってくれる人がいる。故郷のもう、忘れられたような
景色を主として描いていて、懐かしいと思う人が買うようね」
え、絵の出来不出来とは、関係なく?

「出来不出来って、ある程度のところまで行くと、関係ないわよね。
そりゃ、ピンとキリの差は大きいけれど、その中間あたりなら」
ああ、確かにそうだ。

「それにある人の絵のスタイルとか、タッチとかが見慣れてくると、
だんだん惹かれてしまう、ってこともあるでしょう」
ああ、同じ曲がラジオで何度も流されると、ヒットする類?
「そうそう、要するに気に入ってもらって、パトロンに
なってもらえる人ができるかどうか、その辺りで、
プロとセミプロが分かれてくる、って言えるみたいね」

ああ、なんか、短歌とも似ているなあ、と妙に感じ入る。
ちなみに、今年の展示会でも先生は三点ほど出品されたが、
売れる、ということはなかったそうだ。
芸術に正解がないように、作品に値段なんか、無意味、と
思う。でも作者には、そこが一番、そここそが・・・。

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