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ザ・ファイター [映画]

WOWOWで放映されていたものを録画して観た。
監督はデヴィッド・ラッセル。2010年アメリカ制作の映画。
実在した兄弟のボクシング人生を描く、とあって、興味を抱いた。
ボクシングというスポーツは、私はほとんど興味がなく、テレビで
観戦することも皆無なのだが、映画「ロッキー」で映画の中の
ボクシングに開眼してしまい、それからは時々ボクシングを
テーマにした映画を観たり、ドキュメンタリー(例えば『一瞬の夏』など)
も読むようになったのだから、ちょっと不思議だ。

ボクシング作品に興味を持つようになった契機は、「ロッキー」だけでは
なく、ちょうどロッキーをシリーズで見始めた頃、相棒が仕事上、
関わることになった若者に、その分野でかなり名を挙げてきた人がいて。
相棒が言うには、「普段は驚くほど、弱弱しいんだ。ど素人の
自分でも、殴り勝てるんじゃないか、って思えるくらいなんだ。
でも、一旦リングに立つと、別人になるみたいだ。その落差が
見ていて、怖いくらいなんだよ。狂気に近いものを感じる・・・」

そういうことってあるかも知れないな、と思う。
全くの他人を殴りつけ、叩きのめして勝利を勝ち取る、という
スポーツがこの世に存在することを、凄まじいものと感じ、何か、
全く人格が変わらないと、できないことではないか、と思えるからだ。

さて、映画「ザ・ファイター」の方だが、ボクシングというスポーツの
二つの側面、いや、どんなスポーツにも共通する、だが、ボクシングに
とりわけ顕著と思える二つの要素を、共にボクシングに命を捧げながら、
全く性格の相反する兄弟を通して描き出していて、面白い映画だった。

兄のデッキ―は、かつて最強と言われるボクサーを倒したことがあり、
彼らの住む小さな町の英雄と崇められるのだが、そののちの試合で
結果を出せなくなり、麻薬に手を出すようになる。彼はもともとが
怠惰で、傲慢で、ボクサーに必要な日々の鍛錬ができない性格だった。
でも、天才的なひらめきは持っている。彼は弟ミッキーに自分の
夢を託そうとする。

ミッキーの方は、我慢強く、冷静で、自分をコントロールできるタイプの
ボクサーなのだが、兄の持つ、ほとんど直感的な天分は備えていない。
彼は兄に自分のないものを見出し、頼ろうとはするのだが、
放漫な生活を続ける兄に振り回され、次第に自分を見失っていくのである。

彼にはほかにも、自分にまとわりつき、色々と口出ししてくる母親と、
沢山の異父姉に取り囲まれていることにも苛立ちを隠せなくなるのだ。

ある才能を育て、健やかに開花させることの難しさを思いながら観た。
実話とはいえ、リングでの勝負のプロセスに、少々現実離れしたものを
感じたのは、私自身が、現実のボクシングを知らないせいかも知れない。



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