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大きなお世話 [言葉]

相棒が仕事で関わった中国からの留学生は沢山いるが、
その一人が中国へ帰国するとき挨拶に訪れて、こう言った。
「大きなお世話になりました」
相棒は、一瞬、皮肉を言われた、と思ったそうだ。
そうだよね、日本人なら、「要らぬ世話を焼いてくれたな」
と、恨み言を言われている感覚に陥るはず。
でも相棒は、一瞬で気持ちを立て直したらしい。
言っている相手は、発音は流暢だが、何しろ異国からの人。
様子を見ても、皮肉を言いに来た、という雰囲気ではなく。

さりげなく言葉を交した後、「大きなお世話」について、注意しなくては、
と思いつつ、どう話せばいいか、苦慮した、と零していた。

特に話し言葉となると、言葉通りの意味を成さないことが多々あり、
異国語を扱わなければならないとき、妙なことが起きやすい。
その折、相棒は「先生たちへの御礼参り」も、誤解を生みやすい言葉
だよ、と説明したという。「どれだけ理解されたか、わからない」と
自信なさそうだったけれど・・・。

私なども、語感がよく分らないまま英語を喋っていて、頓珍漢なことを
沢山言ってきているような気がする・・・。まあ、ご愛敬と、
大目で見てもらうしかないのだけれど。

言葉は生き物だから、世相を反映して時々刻々変化する。
そのあたりも、扱いにくさの理由であり、また面白いところでも
あるのだけれど。

三週間ほど前、電車に乗っていて、車内を流れる某エンターテイメントの
広告を見ていると、こんな言葉が画面に読めた。
「いいもの見せたいママに いいとこ見せたいパパに」

子どもたちをそのショーに連れて行ってあげましょう、という
広告なのだけれど、これはなかなか面白い対句だなあ、と感心した。

「子供たちに良いものを見せてあげたい」これは、文字通りの意味。
でも一方の
「子供たちにいいとこ(ろ)を見せたいパパ」は、かなり意味が
異なってくる。もちろん、「良い場所を見せたい」という意味ではなく、
「お父さんとして誇れる立場を演じたい」という意味である。
私が日本語を学ぶ立場の、異国からの学生だったら、すぐに理解できたかな、
と考えた。こういうことは、教科書には載ってないだろうなあ、
とも思った。言葉は生きている人々から、直に学ばなくては、
とあらためて思った。
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