SSブログ

リリー・フランキー [藝術]

リリー・フランキーという人物を初めて知ったのは、たぶんTVで
放映され、何となく録画しておいて観た映画で、だったと思う。
何だか胡散臭い、ふにゃふにゃした役柄だったこともあり、
不思議な雰囲気をまとった人だな、という印象を抱いたが。
特に興味がなく(ほんの少しばかりの、嫌悪もあった)映画の
題名も忘れてしまっていた。

その後、彼の自伝的な小説『東京タワー オカンとボクと、
時々オトン』が大ヒットした時は、あの「ふにゃふにゃ」が?
と、大きな違和感を抱いた。
この書名の印象は、どうしたって「三丁目の夕日」的、ノスタルジーだ。
昭和期に田舎から出てきた人間が、東京に抱く、夢と憧れ、その幻想が
たっぷり詰まっているに決まっている。
あの、何か、常識を逸脱したような、人を食ったようなリリーという人物と、
どうしてもイメージが結びつかず、映画化もされて、さらに話題になったが、
全く食指が伸びなかった。のだが・・・。

先日WOWOWの番組表をチェックしていたのだが、見過ぎたせいか、
録画すべき映画がみつからない・・・。そこで、ああ、これ、
ずっと前にヒットしたこのリリーのでもみようか、となった。
リリー・フランキーは、その後見た何本かの映画によって、私の中では
けっこう注目する俳優に、変わってきていたし。

映画の中で、リリーらしき人物を演じるのは、オダギリ・ジョーだ。
片仮名繋がりかよ。オダギリじゃ、いい男過ぎるじゃないか、とも思ったが。

う~ん、見てみて、なかなかの映画だった。
それで、図書館から借りてきて読みました、原作の方も。
こちらもちょっと、リリーさんのイメージを逸脱する、かなり
緻密な文体の小説だった。う~ん、これは嬉しい裏切り。

 東京には、街を歩いていると何度も踏みつけてしまうくらいに、
 自由が落ちている。‥故郷を煩わしく思い、親の監視の目を逃れて、
 その自由という素晴らしいはずのものを求めてやってくるけれど、
 あまりにも簡単に見つかる自由のひとつひとつに拍子抜けして
 それを弄ぶようになる。・・・自らを戒めることのできない者のもつ
 程度の低い自由は、思考と感情を麻痺させて、その者を身体ごと
 道路わきのドブへ導く。
 ・・・自由めかした場所には、本当の自由などない。自由らしき幻想が
 あるだけだ。       リリー・フランキー『東京タワー・・・』

その後、他の本も読んでみようと、書店でぱらぱらと見てみたが・・。
いずれも、最初のリリーさんのイメージが貫徹しているような書ばかり。
購入はやめました。
でも、『東京タワー・・』はやっぱりすごい一冊だったと思う。
ドラマ以上の人生が、あの個性を作り上げていたんだな、と思うのである。
nice!(0)  コメント(0)