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歌集のおまけ? [短歌]

歌集を読んでいると、わからない言葉や読めない漢字が
沢山登場する。初めて買った歌集二冊、についてどこかで
書いたことがあるが、一冊は『中条ふみ子歌集』、そして
『安永蕗子歌集』。前者はすいすい読めたが、安永氏のは
初心者には難解な上、知らない言葉、読めない漢字などが多く、
苦慮したことを覚えている。それでも読み続けたのは、何か
惹かれるものがあったからだろう、実際、今は
かなり好きな歌人の一人である。


年代の異なる歌人なら、言葉が分からないのは当然と思うが、
余り年齢の違わない、つまり十歳くらいしか違わない人の
歌集でも、知らない言葉が頻出して戸惑うことがあるのだが。
私の場合、それは仏教用語に関する言葉を知らないから、と
気がついている。たとえば、最近読み返した伊藤一彦氏の
『微笑の空』のなかに、こんな歌があった。

  草の上(へ)に足拍子とるをさなごの白き拈華に目をみはりけり
                   伊藤一彦『微笑の空』

拈は「ひね(る)」と読むので、ここは「華をひねる」ということに
なるのだが、はたして・・・。辞書を引くとやはり仏教に関係する
言葉として「拈華微笑」という熟語が出てくる。ちなみに「拈華」
だけの熟語は、漢和中辞典や日本国語大辞典にも出てこない。

「拈華微笑」は、釈迦が蓮の華を取って弟子に示したところ、迦葉
だけがその意味を汲んで笑った。そこで釈迦は彼にだけ仏教の
心理を授けた、という故事から、生まれているらしい。
心から心へ直接伝わる、
つまり以心伝心、みたいな意味らしい。となると、
伊藤一彦さんの上記の歌は、子供の足拍子から何か、とても
貴重な真理を得た、ということになるだろうか。
短歌の難しさは、こう言うところにも潜んでいて、だけど、
難しい歌ほど、長く心に留まることも確かなのだった・・・。
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