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ペーパーバック [読書]

「GHQ関係の仕事をしていた父親が廃棄されそうな
ペーパーバックを家に持ち帰っていた・・」現在朝日新聞の
「人生の贈りもの」を担当されている片岡義男氏にとっての
読書体験は、このあたりから始まったらしい。村上春樹氏も
ご自分の豊かなPB体験を語られていた記憶がある。羨ましい!

学生の頃、原書を入手するのはとても難しかった。新宿の
紀伊国屋書店にはかなりおいてあったが、とにかく高い!
岩波文庫の星ひとつが50円だった時代、つまり岡倉天心の
『茶の本』が50円で買えた頃、PBはだいたいが数百円だった。

それでも原書の香りに惹かれ、バイト代が入ったとき、
フランス語版の『星の王子さま』を入手、たしか5百円だった!
数ページ、辞書を片手に読んだところで、そのままになったが、
ずっと大切に持ち、今も、手元にある。

滞米時、近くに古書店があり、ほとんどのPBが一ドルで
購入できることに狂喜し、だいぶ買いあさってきた。
スタインベック、フォークナー、テネシーウイリアムズ、等々。
実際に読んだのはごくわずかだが、手元にあるだけで嬉しくて。

その後は、外国へ旅行する度、空港などの売店で、平積みに
なっている大衆向きらしい読み物を購入するようになった。
旅の途中にさっと読める内容、という需要に合わせてあるので、
これがすこぶる読み易く面白い。日本で言えば、赤川次郎とか、
西村京太郎もの、みたいな感じだろう。

それでも読み切れなかったPBが家に沢山あるので、このコロナ禍で
家籠りしていた時間に、何冊か手にとった。SUE GOUGHの
『wyrd』という小説は、表紙がルオーの絵画のようで。そして
描かれている女性が恨みのこもったような表情なのに惹かれて買った
のだが、抑圧された女性たちの恨みが時空を超えて描かれていて、
引き込まれる。

R.L.STINE『The Girlfriend』は、12歳の頃から付き合い、周囲からも
理想のカップルとして祝福されている彼女がいながら、たった一晩、
別の女性と関係を持ってしまったために、地獄をみることになる
男の物語。よくありそうな話だが、きびきびとした文章が快くて
最後まではらはら、ドキドキしながら読んでしまった。

途中わかりにくい表現はあるし、正直理解できない箇所もある。
だが、大切なのは逐一理解する、ということではなく、話の
流れに添ってストーリーを楽しめることの方にある。
子供の頃の日本語の読書だって、そうだったではないか。

だから手元に沢山の原書があって、なんとなく眺めていて、
ある日、どうしようもなく退屈になって、仕方ない、これでも
読もうか、と手に取ったら意外に楽しくて・・・。
というプロセスは、外国語の読みを身に着ける理想的な
環境なのである。
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