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カラーブックス [藝術]

保育社から刊行されていたカラーブックスというシリーズ。
先日本棚を整理したらなんと五十冊以上あった。
このシリーズが刊行されていたのは、私がお勤めしていた頃で、
私は毎日とても多忙だったに比べ、彼の方は長い夏休み、
春休みなどがあって、私よりずっと時間的に余裕があったらしく。
購入したのは全部、相棒である。

文庫版の大きさで、百ページほどの写真ページと、五十頁ほどの
解説部分から成り、当時一冊が三、四百円ほどの値段だった。
旅物、鉄道物、美術工芸もの、食べ物、トランプやコインなどの
趣味物、と、ジャンルはかなり広く、私にはあまりにも総花的、
とも見えていた。

実は、熱心に読んできたのは『日本の銘菓』と『宝石』のみ。
そして相棒が最初に購入してきたのも、この二冊だった記憶がある。
『日本の銘菓』は、お菓子の文化に言及されている部分もあり、
『郷土菓子のうた』を執筆するときの参考にもなった。

あの頃、我が家に増えていったカラーブックスを横目で見ながら、
ほとんど興味が湧かなかったのは、なぜだったのだろう。

たとえば『スイスの山』。美しいけれど、こういう雄大な景色は
大きな写真で観たい。文庫じゃいかにも物足りない。『古城と
ワイン』や『インド紀行』なども、同じ理由から、ほとんど
開くこともなく過ぎてしまっていた。また『カラー歳時記
花木』や『木の花 木の実』『カラー歳時記 草花』などは、
もっと種類が多く掲載されていて、写真が大きくて見やすい図鑑を
自分で買い、そちらを愛用してきた。

最近の巣籠生活の間、本棚を整理していて、カラーブックスが
目に留まり、ざっと開いてみて、意外に充実した内容だったんだ、
と気がついた。文庫という大きな枷があるなかで、これだけの
写真と情報を詰め込む、相当の技量だった、と驚いたのである。

特に『カラー歳時記 草花』を開いてみて、愕然とした。
写真に摂り上げた草花を詠んだ詩歌が巻末にまとめて掲載されて
いるのだが。「歳時記」という名称に、たぶん俳句だけ、
と私は思い込んでいた。それなら、『季寄せ』を調べる方が早いし、
種類も多い、と思い、開くこともしなかった。

今回パラパラとめくってみると、なんと俳句と共に和歌や短歌も
掲載されていたのである。勿体ないことをしたものである。

 あさ朝の濃き藍の花のひとつより流れて空の色となりぬらし
           太田水穂(朝顔)『カラー歳時記 草花』
 夏に入るあしたの露に咲きおもりゆたかなるかな藤の花房
           尾上柴舟(藤の花)『カラー歳時記 花木』
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