SSブログ

パンの美味しさ [食文化]

米原万里の妹、井上ユリ『姉・米原万里』を読んでいたら、
家族で美味しい黒パンを探して東京のあちこちのパンを
食べ比べた、というくだりにであった。
長くパン文化圏で暮していると、そうなるだろうとは
たやすく想像がつくのだが。

ブルガリや出身のティナさんは、京都の大学院で
しばらく学んでいたが、「日本のパンって、どうしてみな
甘ったるいの、それにどれもこれもふにゃふにゃして不味い。
塩味の効いた、ぱりっとした小麦粉の香りのするパンを
食べたい」と、こぼしていた。京都は、日本の中では
美味しいパンに出会いやすい場所のような気がするのだが。

ベーカリに溢れかえっているのはお菓子系のパンばかり、
食事用のパンとなると、ぐっと選択肢は狭まり、
食パンと呼ばれる、山型、もしくは角形のパンが大半を占め・・。
日本人は、柔らかく粘っこいご飯を主食にしてきたので、
パンも同じように、柔らかくモチモチとした、水分の多い
パンが好まれるようだ。その辺りの嗜好から、今の
「食パン」の味と食感が定着してきたんだろう。

永田和宏さん一家とは同時期に滞米していたことがあり、
ワシントンで歌会をしたこともあるのだが、帰国後
初めて河野さんと何かの折にばったりお会いした時、
いきなり「アメリカって、パンが不味かったわよね」
と切り出されて、ちょっと面食らったことがある。
でもそれは一瞬で、たちまち、あのくたくたとして
水っぽい、アメリカの「食パン」を思い出し、
意気投合したのだった。日本の食パンは、あれを
お手本にしてしまったのではないか、と。
それにしても、どうしたらこんなまずい食べ物が
大量に作れて、売れてしまうのか、と不思議になるくらいの
不味さであった・・・・。

パンが一番美味、と感じたのは、私は西欧でも中欧でもなく、
ウズベキスタンである。ここのパンは、大きな平たい
円形をしていて、どちらかというと、インドのナン、
あるいはペルシアンブレッド、と呼ばれるものに近い。
ほんのりと塩味が効いていて、小麦粉の味と香りが
素晴らしかった。

私はほかに、ドイツで食べたライムギパンが気に入っていて、
日本のあちこちのパン屋で、買い求め、試しているのだが。
思い描くような味に出会えていない。もしかすると、実際に
出合った味をはるかに越えた、とてつもなく幻想的な美味を、想像的に
作り上げてしまっている結果なのかもしれない、と思うことがある。



nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0