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死を告げる女 [映画]

「死を告げる女」は2022年韓国制作の映画で、チョン・ウヒ主演。
花形キャスターのチョン・セラには、競争相手がいて気が抜けない。
また、母親は絶えず彼女のキャスターとしての姿勢に口を挟んでくる。
同じキャスターである夫との仲も冷えていて、母は強く離婚を進める。
こうしたプレッシャーからか、彼女はいつも誰かに首を絞められ、
殺されかける夢に、悩まされているのだった。

そんなある日、彼女のもとに一本の電話がかかってくる。
「自分は『ある人』に脅かされている。子供も殺される。
自分も近いうちに死ぬ。憧れのキャスターであるあなたに、
自分の死を確認してほしい」と、切羽詰まった声で告げるのだ。

スクープの欲しい彼女は、告げられた住所へ1人おもむき、
その家の浴槽に死んだ少女と、女性の首つり死体を発見してしまう。

サスペンスらしい、コワイ展開である。途中までは何度も、
見るのやめようか、と思ったくらい。

ところが、三分の一程見たところで、どうもこれは・・・、
と思い始めた。恐怖をあおる映画であるに違いないが、いわゆる
スプラッターもののような、恐怖一辺倒の映画ではなさそうなのだ。
人の普遍的な心理に着目して組み立てられていて、精神科医も登場、
主人公を混乱に貶めているのは、実の母親らしいと仄めかされる。

やがて、母親はかつての花形キャスターで、思いがけず、セラを
身籠ってしまい、キャリアを続けていくことと子育てとの両立に
苦しみ、セラの首に手を掛けたこともあったことが分かってくる。
セラが窒息させられそうな悪夢を見るのは、その経験からだった。
母親は思い直し、名前まで変えて、娘の成長にすべてをかけることに。
セラの仕事に細かく口出しするのは、諦めた夢を託そうとする結果だった。
当然ながら、母と娘の関係は、破綻の道を辿っていく。

ところどころ、オカルトっぽい描写もあるのだけれど、母との
関係に苦しんだ記憶がある私には、現実感に満ちていて、そういう
意味でもとても怖い映画だった。サスペンスの形をとっているので、
ネタバレしないよう、この後の展開は伏せておくけれども。

親子の関係はとても難しい時代になってきている、と心底思う。
昨日は、小さな女の子が、両親から虐待を受け、薬殺される事件や、
まだ十五歳の息子が両親を殺害した事件も報じられていた。
子どもを産む人はさらに減るのでは、と危惧する。この映画が
作られた韓国の出生率は、一をはるかに切ってしまっている。


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