SSブログ

山形の味・だし [食文化]

十年くらい前からだろうか、スーパーで「山形名物・だし」なる
食品を見かけるようになった。私は山形県南西部で中学生まで
暮していたけれど、「だし」という料理は全く知らなかった。
母は山形市近くで生まれ育ったのに、我が家で話題になったこともない。
母も偏食家だったから、嫌いで避けていたのかも。

スーパーのパック入りの「だし」は、細かく刻んだ野菜を調味料に
漬け込んだもののようで、見かけはどうもぱっとしない。特に食指も
動かないまま、ずっと購入するに至らなかった。まして作り方を調べて
自分で作ってみようなどと思うこともなかったのだけれども。

四月に米沢に行った時、散歩中に立ち寄ったスーパーで「だしの素」なるものを
みつけ、その時の気分で購入してしまった。こちらのスーパーで見る
パック入りのものより、この「だしの素」の袋に印刷されている
写真の「だし」が、実においしそうだったこともある。

それでも米沢から帰京して三か月余り、仕舞いこんだまま忘れていた。
この暑さの中、パントリーの中を整理していて見つけ、「あ、暑い時には
だし、は食欲を促進するかも」と思ったのだった。ずっと以前、住んでいた
家の隣の奥さんは山形県上山市の出身で、「夏は、だしを掛けたご飯が
いちばんおいしい。うんと暑い時は、それくらいしか食べられない」
と言っていたことを思い出したのである。

それで作ってみました。って、「だしの素」には、あらかじめ、乾燥させた
オクラ、みょうが、あおじそ、だだちゃ豆、昆布などがはいっているので、
ぬるま湯で戻した後、胡瓜のみじん切りと混ぜ合わせるだけなのだったが。

兄が庭で採れた茗荷をたくさん送ってくれていたので、そのみじん切りも
混ぜ合わせて出来上がり。冷やすとよけいに美味、とあったので、
冷蔵庫にしばらく寝かせた後、夕飯の時に食べてみた。
なるほど、昆布から滲みだす柔らかい塩味が野菜をほんのりと包んでいて
ご飯にかけると、知らぬ間に食が進んでいるのだった。

米沢のYさんから頂いた『おきたま伝承料理集』にも「だし」の
作り方が載っていて、こちらは昆布や豆は入らず、長茄子のみじん切りが
使われているものでした。次は「おきたま方式」で作ってみることにしよう。

岡山出身、関西在住の短歌の仲間が、「スーパーにあると買ってくる」と
言っていたので、山形の「だし」、今では全国区なんですね。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0