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折々の歌・「塔五月号」から [短歌]

「塔」五月号が届いた。相変わらずの大冊でとりあえずのぱらぱら読み。
その中から目に留まった作品について、触れてみる。

 寒いねと答えてくれるロボットを買おうと思うお金を貯めて
                       相原かろ
俵万智さんの「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ」
という作品を踏まえてのもの。生きていることの寂しさに、しん、となる。
結句は少し、当たり前すぎてつまらないかも。もう少し飛べたかな、と思う。

 飛ぶことは自由と思へど群れ成して空を回ってばかりゐる鳥
                       千名民時
自由過ぎると時間を浪費するだけ、ということにも陥り易い。他者への批判、
或いは自省か、と面白く読む。以前ベトナムを訪れた時、走行するバイクの多さ、
排気ガスに辟易した。彼らも何処へも辿り着かず単に回っていただけ、だったかも。

 アスファルトに白いマスクは落ちていて四肢がほどけたようなしどけなさ
                 山川仁帆
このところよく見る光景で、私も何首か作ってみているが、これという作品は未だ。
「四肢がほどけた」という比喩に納得する。落ちているマスクの大半は、すでに
「白く」はないのだが、これにより下句が生きる。捨てマスクの、この艶めかしさ。
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