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置賜の味・くるみ [食文化]

子供の頃、特に年末近くになると、母の実家・天童から、様々の乾物が
送られてきていたが、中には必ずゼンマイが入っていた。ゼンマイは
生食できないとのことで、茹でた後、からからになるまで干し、保存食品
として重用される、ということらしかった(子供の頃は良く知らなかったが)。

母はこのゼンマイを茹でて戻し、毎年お節料理として「しらあえ」を作ってくれた。
ゼンマイの他に、人参、糸こんにゃくなども具として加える。豆腐の水気を抜き
すり鉢でよく擦って、砂糖や醤油などで調味し、これにゼンマイなどの具を
混ぜ合わせて作る。その時、豆腐と共にすり鉢で擦られるのが、クルミなのだった。
私は白和え、という料理はあまり好きでなかったが、この胡桃の食感は
好ましく思ったことを覚えている。

二十年余り前、私は生まれ育った山形県南西部にある小国町へ、四半世紀ぶりに
出掛け、幼友達のユミちゃんの家に泊めてもらったことがある。ちょうど
お盆の時で、ユミちゃんと彼女の妹のユキちゃんが、お盆の料理として
水ようかん状の食べ物を食卓に加えてくれた。食べてみると、何か、
とても懐かしい味だった。そう告げると、「母が良く作っていたから」
という返事。私は彼女の家で、この「胡桃寒天」を食べていたんだった!

母も作ってくれた記憶があるが、母の胡桃寒天は白糖が使われていて、
ユミちゃんの家のそれとは味が異なった。母は、大の黒糖嫌いだったからだ。
でもこの寒天は、黒糖で仕立てた方がずっとコクがでて、美味しいのである。

彼女のお母さんはその時、すでに亡くなっていたのだが、小国町出身で、
まさに置賜の味を作り続けておられ、その後はユミちゃんたち姉妹が
その味を継いでいたのだった。

他にも、置賜や最上の料理にはクルミが多用される。お菓子にもおかずにも。
調理のキーポイントになる食材なのだった。味と食感との両面で。
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