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定期から普通へ [生活]

施設に入所して三年目に入った母は、九十代半ばになっている。
やや認知症気味ではあるが、記憶力は良くて、足腰もしっかり。
小さな歩行器を押しながら、自分の足でどこへでも行く。

施設の費用は母の預金口座から落としていたが、入ってくるお金
(年金)より出ていくお金の方がはるかに多く、母はそのことを
とても気にしてて、このところ会うたびに「郵便局の定額口座を
おろして、介護費用にあててちょうだい」と口にするようになった。

それであらためて尋ねると、定額にしてから十年以上、手をつけていない、
という。十年以上だと、下しにくくなるのでは、とにわかに不安になる。
それで思い切って、母の定額を全部解約して普通口座に移すことに。

予め郵便局に電話して尋ねると、本人が来れない場合は自筆の委任状、
が必要。また普通預金口座を開設していれば比較的簡単だが、もし
ない場合は、新たな開設はできないので、金額によっては二、三日前に
連絡してもらってからでないと用意できない。さらに・・・。
と、何やら面倒そうなことを沢山言われた。要するに、母が自分で出向け、
普通口座があれば比較的簡単と分り、思い切って、決行することに。

って、大げさのようだが、実に大変なのである。母がいる施設から一番
近い郵便局まで、歩いて四百メートルくらいある。でもその位なら、
と、お天気の良い日、印鑑(可能性のありそうなもの全部)と、普通預金
の通帳(開設されていてほっとしたのだが、随分古い。最後の出入金は
25年も前で、残高は数千円である!)と、定額通帳(案の定、十年以上、
放ってあった)と、施設から借りだした母の保険証とをまとめて持って、
郵便局へ向かう。母は最初は元気よく歩きだしたのだが、途中で
「え、お昼を食べに行くんじゃないの?」
「定額を普通預金にするため、って言ってあったでしょ」
途端に、歩かなくなってしまった。バス停近くまでなんとか連れて行き、
ベンチに腰掛けさせて、私は施設の駐車場から車を回すことに。

少し遠くでも、駐車場のある郵便局へ連れていくことにしたのである。
この点、全国に支店のある郵便局はとても便利、ほっとする。

だが、母の普通預金が休眠口座になっていたことなどなどで、
手続きに一時間以上もかかってしまった。
「もう、お昼でしょ」と、繰り返す母をなだめ、なだめ・・・。
ようやく手続きを終えても、まだその後の処理すべきことは多々あり。
でも、疲れてはいられない。母はもっと疲れているはずだから。

車の入る和食レストランへ連れて行き、一緒に食事をする。
温かい天ぷらに舌鼓を打っている母をみて、
何だか、涙が出そうになった。


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