SSブログ

米沢・半世紀 [旅]

先月のある日、見知らぬ人から一通の封書が届いた。
住所は米沢市になっていて、私が昨年刊行した歌集『海の琥珀』を
市立図書館で目にし、私が米沢市に縁のあることを知って
お手紙をくださったのだった。

 幾万の白蛾湧き立ち乱舞するさまを見よとぞ夜半の地吹雪
 馬橇の轍が月に輝けり故郷とは美しき寂寥なりし
                岡部史『海の琥珀』

などの歌が引いてあった。差出人のYさんは、私より三才年下で
短歌などの短詩形に手を染めておられる方らしい、のだが。
文章は実に軽快だった。
「寂寥の今に足を運ばれる折は・・・山菜の天ぷらでもつつきませんか」

とにかく自分の歌集に目を通していただけたことが嬉しくて、お礼の
葉書をだした。ちょうど、今年で「塔」入会四十年になる私は、「塔」の
特集「豊穣祭」に新作七首とエッセイ、そして近影を掲載するために
写真を撮ってもらったところ。思い立って、米沢の名品、笹野一刀彫の
「おたかポッポ」と共に写したところだったのだ。何という偶然。

この笹野一刀彫の鷹は、高さが六十センチ以上ある大きなもの。
中学卒業時、父が山形から東京へと転勤になり、都立高の受験に間に
合わなかったため、私は一学期だけ、下宿して米沢興譲館高校に在籍した。
転校するとき、同級生たちが記念に送ってくれたのがこの置物だった。

懐かしい。これを機会に、米沢に行ってみようか。心が騒いだ。
Yさんには、きっと暖かく迎えてもらえる、そんな予感がした。
                   (この項続けます)
nice!(0)  コメント(0)