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故郷の熊 [生活]

私は「塔短歌会」に入会して、今年で四十年になるのだけれど、
私より先に「塔」に入会していて一昨年第一歌集を出されたSさんから、
歌集評を頼まれたのは昨年のこと。
その折にSさんの娘婿さんが、私の生まれた山形県小国町の出身であると
聞かされた。あまりの偶然に驚いたのだが、同様に驚かされたのが、
その娘婿さんの祖父に当たる方が、「マタギ」だった、と話されたこと。

子供の頃、自分の住む町に熊がいて、マタギもまた存在したということを
私は知らなかったのである。小国町は周囲を深い山に囲まれた小さな盆地の
なかにあり、たとえそれらの山中に熊が多数生息していたとしても、
町なかに出没するようなことは決してなかったからだろう。

購読している山形新聞電子版の二日ほど前の三面記事に
驚くべき記事が載っていた。小国町では生息する熊に対処するため、
「個体調整」を行っている、という事実にまず驚愕し、さらに
その作業の最中に、誤って作業者の一人がもう一人の脚をライフルで
撃ってしまい、重傷を負わせた、という記事内容にも震え上がった。

グーグルで見てみると、小国町周辺の道路整備が進み、キャンプ場や
宿泊施設ができて居て、私が暮らしていた頃の素朴な山村では
なくなっているようなのである。これでは、人間が熊と遭遇して
しまう機会が格段に増えてしまうだろう。

町の人口は減り続け、こうした観光施設の稼働率もかなり
下がっているのではないだろうか。でも、町の経済のために
町外からの観光客を誘致することは大切なことだと理解はできる。
でも、でも・・・。昔の素朴な思い出を抱えてしまっている者には
なんとも複雑な故里事情である。

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