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ペルー旅物語(その6) [旅]

マチュピチュは、クスコの西に百キロほど離れた地にあり、
そこへは鉄道でしか行けないらしい。ペルー南部鉄道サンタアナ線、
と呼ばれる支線がクスコ駅とマチュピチュ遺跡口を結んでいる。
朝早く、クスコを発ち、午前中にマチュピチュ口へ着く予定。

早朝のクスコの町には霧が流れ、その霧の晴れ間晴れ間に、
例の独特の民族衣装をまとった人たちが、音もなく行き交う。
それがとてもミステリアスで、息をのんだことを覚えている。

列車はとても混んでいて、多くは観光客、そしてどこかの
テレビ局の人だろうか、大きなビデオカメラを持った人たちも
乗り合わせていた。駅に着くたびに、物売りの人たちが車窓に
寄ってきて、盛んに呼びかけてくる。水や食べ物を売る人たちは
混んでいる乗客をかき分けるように乗り込んできて、ものを売ろうとする。
騒音と匂いとで、着くまでにかなり疲れてしまったことだった。

遺跡口に着くと、以前に書いたように、観光客でごった返していたが、
私はすんなりとバスに乗れて、ほっとしたのもつかの間。
このバスが、かなり恐ろしい乗り物だった。ほとんどはげ山のような
急斜面、そこにへばりつくようにつけられている砂利道。
遺跡口から遺跡までは、高低差が450メートルほどあるという。

そこをまるでいろは坂のようにカーブを繰り返しながら登るのだが、
道は狭いうえに、運転手は相当のスピードを上げて行く。
途中で車窓から見下ろすと、恐ろしいほどの崖、その下を峡谷
ウルバンバの川が流れる。
ちょっとのミスで、バスはこのがけ下数百メートルを転がり落ちるのか、
と思うと、身が縮んだ。

こんな岩山の上に、なにゆえに巨大な石の都市を築いたのだろう。
かくまでの建築技術を持った住民たちが、なぜ滅んだのだろう。
疑問は次々に浮かんできた。そしてようやく、バスはその
天空の都市へとたどりついたのだった。(続きます)
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