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山形新幹線 [旅]

朝日新聞は土曜日にBeという紙面が付録的についているが、
このBeには原武史氏による「歴史のダイヤグラム」という連載記事が
掲載されていて、いつも楽しみに読んでいる。本業は政治学である原氏は、
大の鉄道マニア、ということで、あれやこれやと実に詳しく、意外なネタを
次々に繰り出されていて、その懐は無限大のようなのだ。

先々週は「山形に先に到着するには」という題で、東京駅で山形新幹線を
見送った同じ人が、山形駅で、ホームに迎えに出ることができる例、を
紹介していて、驚かされたことだった。東京駅の22番線を7時12分発の
つばさ123号で出発した人を見送った後、21番線の7時16分発の東北新幹線
はやぶさ101号に載り込むと、この列車は宇都宮でつばさを追い越し、
仙台に8時49分に着く。急いで駅前のバス乗り場から8時52分発の山交バスに
乗ると、このバスは9時52分に山形駅前に着き、先のつばさ123号(10時06分着)
を、ゆっくり出迎えることができるのだという。

なんでこんなことになるのか、そのあたりを原氏は、なかなか鋭く
突いておられて、興味深いのだが。要するに、山形新幹線を創設した以上、
存在意義を際立たせるために、やや姑息な手を打っている、ということなのだ。
以前は仙山線を走らせていた特快をなくして、快速に落とし、その本数を
減らしたこともそのひとつ。山形交通が走らせている高速バスは、JRの
事情など関係ないので、この区間をこの速度で走り、山形新幹線を先回り
してみせてくれている、というわけである。

山形で育ち、特別な思い入れもある私には、ちょっと悲しい気持ちに
なるようなJR裏事情だった。

先々月に米沢に半世紀ぶりに訪れたことは、このブログでも何度かに
わたって綴ったのだけれど、山形新幹線はその時に初めて利用した。
これまで、東北新幹線の方は何度か利用していたのだが、山形新幹線が
東北新幹線と福島まで併結して走る、ということを知らなかったので、
東京駅で、東北新幹線の方の車両に乗ってしまった私は、指定席の番号の
車両に行き当たることができず、右往左往したことだった。

山形新幹線の車両は、前方に併結されて走っているらしい、と気付いて
ようやくほっとしたのだけれど。福島までは待ちきれず、途中、
大宮でさっと降りて、山形新幹線の方の車両にうつり、ようやく
指定の席を見つけたときは、心底ほっとした。

でも、間違えて、山形へ行くべき人が仙台へ行ってしまったり、
その逆も多いのだとか。福島が近づくと、
「この車両は、山形新幹線です。福島で切り離します。
仙台方面へお出かけの方は・・・」とアナウンスが入る。

福島からは、山形新幹線は在来線の線路上を走るので、
見違えるほど、速度がのろくなる。これが新幹線!? と
いやになってしまうほど。そして、周囲の景色も、がぜんのどかに
見えてくるのだった。そしてなんとなんと、終点の新庄近くでは単線区間を
はしることもあるのだそうだ。新幹線が単線って、アリか?

そんな経験から、こんな歌ができ、昨日の横浜歌会の詠草として
提出してみた。

  「福島で切り離します」目瞑りて運ばれてゆく寂しい方へ
                      岡部史

横浜歌会には東北出身の人が複数いる。きっと正確に読んでくれる人が
いる、と安心して出したのだけれど。そして、やはり山形市育ちのMさんが
的確に読み、批評してくれて、ほっとしたのだけれど。
現実の山形新幹線を離れ、震災後の福島の孤立性に言及された方や、
どこか遠い未知の世界へと(まさにみちのく、通の奥)運ばれていく心細さなどを
汲み取ってくれた方もいて。
意外なことだったが、それもそれで、とても面白く楽しいことだった。
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