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茎立菜 [食文化]

朝、いつものように電子版の山形新聞を見ていたら、
「茎立(くきたち)菜」についての記事が目に留まった。
山新で紹介される食材のほとんどが初耳、の私なのだが、
この「くきたち」という言葉は記憶の中にあって、はっとした。

記事によると、「春を告げる野菜」なのだとか。秋播きして、
2,30センチほど成長した後葉を落し、雪中で育つ茎の部分が美味なので、
こう名付けられたようだ。菜の花に似た野菜で、小松菜にも近い植物らしい。

さらにネットで調べてみると、一種の伝統野菜で、万葉集にも
詠まれている、とある。廣野卓『食の万葉集』(岩波新書)を開いてみると
「間引き菜(九々多知・茎立ち)」との項目に
  上つ毛野 佐野の茎立折りはやし 吾は待たむゑ来しとし来ずも
           巻14-3406上野国歌(こうずけくにうた)

とあった。茎立を「トウが立った」つまり「盛りを過ぎた女性」に
見立てて、少々おふざけで詠んでいる、と思われるような歌である。
和歌によくあるように、「茎立」そのものを詠んでいる歌ではない。

さらに、私が食べていた「くきたち」なる野菜と同じものかな、と
言う気もしてくる。単なる「間引き菜」なら、一種の普通名詞みたいだし。

子供の頃食べていた茎立は、やはり菜の花に似た味がしたような
気もするのだが、もう忘却の彼方である。ちなみに私が育った
山形県置賜地方には、「ふすべ漬け」という茎立を使った郷土料理
もあると、ネットに載っていた。ふすべ漬け???
全く覚えがない。いつもお浸しだけで食べていたような記憶しかない。

でも、雪の下で自らの葉を落してまでも、雪解けを待つ野菜がある、
なんて、ちょっと涙ぐましくて。ついここで、紹介したくなったのでした。               
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