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文字を習う [言葉]

現在の日本人に、文字の読めない人はほとんどいないだろう。
学校教育にはいろいろと問題はありそうだが、とりあえず、
読み書きや簡単な計算を、無料で漏れなく教えてはくれる。

もう三十年余りになるけれど、アメリカに滞在し始めた時、
先ずは、外国人のための英語教室を探して通い出したのだが。
アルファベットを読み書きから教える、無料の教室も併設されていて、
主に大人の黒人女性たちが通ってきていた。彼女たちは、初等教育を
受けられなかった人たちだった。八十年代も後半になっていたのに、
そして、本人たちが教育を拒んだというわけでもなく・・・。
おそらく、差別と貧困の結果だったのだろう。

そうした人たちがどんなふうに授業を受けているか、
ヴォランティアの人に誘われて、見学したことがある。

教科書には、一頁にひとつずつ、大きな絵が描いてある。
一ページ目は、赤い綺麗な林檎。その林檎を縁取るように
「a」の文字が記されている。「An apple」と教師が読み、
生徒たちは続けて発音し、林檎の回りをなぞるように「a」と
指で描く。二頁目には、鳥の絵が描いてあり、その絵を縁取る
ように「b」の文字が書いてある。教師が「A bird」と読み、
生徒たちが発音を繰り返し、bの文字を指でなぞる・・・・。
大人になってからの文字の習得の大変さを、つくづくと感じる時間だった。

「読み書きができないということは、働く場もごく限られ、貧困から
脱出できないんです。それで、彼女たちは頑張ってなんとかしようと
しているんですが・・。脱落してしまう人も多いんですよ。」

ヴォランティアの人が、そう話してくれた。
今はどうだろう、初等教育はもう、立場を問わず、浸透しているのだろうか。
教育は、人種や立場を問わず平等であってほしいし、今では状況は変わっている
だろうとは思うのだが。

アメリカの教育は、日本のように、誰もがまんべんなく、最低のことを
身に着ける、というやり方、というより、本人が自主的に学んで行けるよう、
モチベーションを植え付ける、という方へ、重きが置かれているように見える。
できる子はそこでインスパイアされて、好きな方向へ自在に進んでいくだろう。
好きで興味あることをみつける、これは人生でとても大事なことだとは思うのだが。

その過程で、落ちこぼれていく子も多いのではないだろうか。
勉強だけが大切とは、勿論思わない。でも、初等教育は別であろう。
誰もが最低身に着けるべきことがあるし、その段階では、決して
落ちこぼれを作ってはいけない、と思うのである。
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