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南の島の不思議な話・続 [旅]

ジャワ島の土木遺跡を訪ねる旅で、ガイドの青年から、
「小さな子供が亡くなると、樹木の洞に葬る」部族がある、と
聞いて、ずっと心に残っていたのだったが。

それから数年後、沖縄を久しぶりに訪れて、その地に伝わる
キジムナーについて知ることになった。キジムナーは、古くから伝わる
妖怪、あるいは精霊のことらしい。赤い顔をした子供で、古い木、多くは
ガジュマルに棲んでいる、と聞いて、ジャワ島の樹木への「埋葬」を
思い出した。木に棲む、子供の形をした精霊との関連性を思ったのである。

それからしばらくして、奄美大島を訪れる機会もあったのだが。
ここでは、ケンムンという妖怪についても知ることになった。
河童の仲間のように伝わっているが、住んでいるのはやはり、ガジュマル
なんだという。河童なら、水際の岩場あたりに住んでいてもよさそうなのに。

ジャワ島で、小さな子供が死ぬと樹に葬るのは、全うできなかった命を、
樹の中で再生させよう、という望みに支えられたものではないだろうか。
南の島で、もっとも生気盛んな生き物である樹。

死んだ子はそこから再生し、それなりの姿を得、周囲の人々に子どもらしい
いたずらをしたり、跳ねまわって遊んだりしながら、身近で生きている、
そんな思い、願いが、キジムナーやケンムンのような
妖怪の存在を信じさせるようになったのでは・・・・などと考える。

沖縄や奄美に、小児を樹に葬る習慣があったとは、耳にしたことがないし、
ジャワ島に、キジムナーのような妖怪が存在しているかどうかも知らないが。

私たち日本人の、おそらく数パーセントくらいは、ジャワ島あたりを源とする
人たちの遺伝子を持っている。南西諸島となると、もっと強く、彼らの血を
ひいていることだろう。遠い昔、樹木への「葬儀法」が伝わり、やがては、
樹に棲む子供の形をした妖怪が生まれた、としても不思議はない気がするのだ。
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