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カタクリの花 [言葉]

私の住む東京多摩近郊には、つい三、四十年位前まで
カタクリの自生する野辺があったそうである。自然をこよなく
愛する私の義弟が、保護活動を行っていると聞いていたが、
その後、やはり保護地区ができ、その地区内でのみの自生が
確認されるのみとなったらしい。宅地化が急速に進んだからだろう。

カタクリは、万葉集にも登場する古来からある植物なのだが、
古名を堅香子(カタカゴ)という。

  もののふの八十乙女らがくみまがふ寺井の上の堅香子の花
                 大伴家持(巻19-4143)

家持が越中守として赴任していた国府庁(現在の富山県高岡市)
近くの赤坂谷の泉のほとりで詠まれたとされている歌。
この頃は、きっと美しい紫色のカタクリの花が、蝶のように
花びらを震わせながら、群れをなして咲いていたことだろう。
水を汲む乙女たちに、カタクリの花の群れをダブらせているところが、
ちょっと、無理があるかな、とも思えるのだが。これも短歌的誇張?

ところで、現在はすっかりカタクリ、の呼び名に切り替わっている
かつてのカタカゴ。先日いつものように山形新聞電子版を読んでいたら
今も「カタカゴ」と呼んでいる地域があるとのコラムが目に留まった。
ああ、なんとなんと、私が子供の頃に暮していた山形県南西部の
小国町! でした。ええ、そうなのかあ、と驚く。山形新聞の記者が
驚いて記しているのだから、おそらく山形県内でもこの古名を用いて
いる地域はほとんどない、ということだろう。

子供の頃、そのカタカゴの花を見た事はなかった。その名も知らず
暮してきた。なんとも、もったいないことだった。

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