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韓国の食 [食文化]

韓国は何度か訪れ、また二カ月ほど暮らしたこともあったが、
その度に食文化の豊かさを感じてきた。キムチと焼き肉が代表的だが、
もちろん、それだけではなく。特に冬の鍋料理などは絶品だった。
だけれども・・・。

私は昨年『砂糖をめぐる旅』という紀行文を刊行したが、砂糖産業を尋ねて
訪れた十数か国の中に、フィリピンも入っている。特にネグロス島が最も
製糖の盛んな島なので、観光地ではないだけに大変だったが、とくに計画して
十年ほど前に訪れている。

ホテルのロビーに着いたとき、多くの東洋人がたむろしているのに驚いた。
特に彼らが若かったこと。年齢はいろいろだが、下は五、六才(保護者が
付き添っている)から、十代後半~二十代で、六、七割は男性だった。
耳を澄ますと、韓国語が聴こえる。何を目的に大挙してこの島に?
さらに不思議だったのは、朝食時も夕食時も、レストランやカフェなどで
彼らのうちの誰とも会う事はなかったことである。廊下ですれ違うことも、
エレベータで出会うこともない。あの団体はどこで過ごしているのだろう。

その謎は翌翌日に解けた。ロビーで製糖工場へ行くためのタクシーを
手配してもらっていると、綺麗な日本語で話しかけてくる青年がいた。
「韓国人だけかと思ったら、日本人もいたんですね」
と驚いたのだったが・・・。彼によると、この若者の一団は、ホテル内で
ひらかれている英語の講習会に応募してきた人たちだという。

「僕も参加しています。別のビジネスホテルに泊まって、ここには
毎日通ってます。フィリピンは安く英語を教われる国として、今、
中国や韓国では人気なんです。ネグロスはとりわけ安いし・・」
と言いだすではないか。それで一つ目の謎は解けたのだが・・・。

「彼らはどこで食事しているんでしょう?レストランでは見かけないけど」
「料理人付きで来てるんです。特別な部屋で彼らだけで食べてるそうです」
「そうなんだ。最初の日にロビーで大勢過ごしているのを見たけれど、
あとは、廊下でも会わないし。プールとかにもいないし・・・。
どう過ごしているんだろうって、不思議だったんだけど」
「沢山課題が出ているから、みんな部屋に籠って勉強してるんですよ。
休憩時間もあるけど、韓国から持ち込んできたお菓子が出るらしいし」

韓国の人らしいなあ、とそこで大きくガテンしたのだった。

自国の素晴らしい食文化は、大いに誇るべきだ。けれど、しかし。
「郷に入っては郷に従え」ということもあるのではないか、とも思う。
ネグロス島のホテルに籠りっきりで、韓国食だけを食べ、韓国人同士だけで
過し、ほとんど島の様子を見ることも、島の人たちと触れ合うこともない。
それで異国語を学べるのかな、という気もするのだけれど。
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