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南の島の不思議な話 [旅]

インドネシアを初めて訪れたのは、もう三十年余り前のことになる。
相棒に、農業土木を専攻、大学で教えている友人がいて、彼が全国の
農業土木を専攻する学生・院生に「ジャワ島の土木遺跡を訪ねる」旅への
参加を呼び掛けたことがあり、私達夫婦も参加することになったのだ。

インドネシアは、古くから稲作を農業の中心にしてきて、さらに
火山国でもあるなど、日本に共通点が多い。水利の先進国である
オランダに統治されていた期間が長く、その間に創設された様々の
土木施設が今も残っていて、中には現役で活躍しているものも多い。
それを見学するための旅。ジャカルタから貸し切りバスで、ジャワ島内の
所々で宿泊し、農業土木に関する施設を見学しながら数日掛けて横断していく。

その間を通して付き添ってくれたガイドは二十代後半の陽気な男性で、
来日の経験はないというがなかなか洒脱な日本語を操る。
彼は同世代の学生たちに溶け込み、旅をより楽しいものにしてくれた。
その彼が、最初の夜、バスの中で話してくれたことが忘れられない。
「インドネシアでは、死ぬとお墓に入ります。でも、ある部族の人たちは、
小さな子供が死ぬとお墓に入れず、木の幹の空いているところに、葬ります」

バスのなかが、一瞬しーんとなったことを覚えている。学生達はみな驚いたのだ。
でも、ガイドの男性は、自分の日本語が通じなかった、と思ったのか、
「わかりますか、小さな子供が死ぬと・・・」と繰り返した。

それからは、大きく暗い森を通るたび、そのどこかに挟まっているかもしれない
小さな子供を想像して、ちょっと心が震えた。どうして樹に葬られるのだろう。
とずっと考えることになった。
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