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九相図 [藝術]

「九相」とは仏教の言葉で、人間の死骸が腐敗し、白骨化するまでの
九つの段階について観想すること、らしい。でも、単に思い描くのみ
ならず、実際にその過程を九枚の絵に描き出す、という作業も行われていた。
九相図と呼ばれ、何種類か残っていると知ったのは、ほんの数年前である。

放送大学の授業を偶々見たからで、そこでは実際の絵も映し出されていた。
中世~近世期京都の町はずれにあった死体置き場に通って描かれた、
という説明もあったが・・・。
仏教の修行中、色事に迷わされないよう、肉体のむなしさを僧徒に
解くために描かれた、とも聞いた。何だか凄惨な印象に、ぞっとしたのだが。

担当した者は最初は、吐き気をこらえるような思いで描き始めたにちがいない。
だが、描きながら、やがては、その実態に迫れることに、何か
心震えるような思いも味わったのではないか、という気もしてくる。
極端だが、例えば、芥川龍之介が『地獄変』に登場させた絵師のように。

ピーターラビットの作者、ビアトリクス・ポターも、身近な動物が
亡くなると、骨を取り出して、絵に描く、という作業をしていたらしい。
衝撃的だけれど、あのリアルな動物の姿態を描けたのは、そのおかげなのかも。

  姪の朋子は絵を描く
 死に顔を三時間おきに描きしとふ皮膚が骨に張りつく過程
                    河野裕子『葦舟』

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