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歌評と爪 [短歌]

一月五日、横浜歌会は第一日曜定例なので、
どこの地区の歌会よりも早く始まる。松の内なのに、
この日も、14人が集まった。歌数は28首。

歌会はいつもとても楽しくて、ちょっぴり苦しい。
思いがけない歌、楽しい歌、ちょっと人生観が変わりそうな
って言ったら大げさだけれど、モノの見方を変えてくれるような
凄い歌に出会えることもあって。そして、それらの歌に対する、
出席者の色々な意見を聴けることも大きな楽しみ。

その一方、意見を求められて、どう発言すべきか、苦慮する、
という場面にも多く遭遇する。歌の意味がよく理解できなかったり、
理解できても、どう評価したら苦慮する場合もあり。

意味が分らないときは、みんなに問いかけてしまえばいい、と
割り切っている。永田和宏さんが20年くらい前、当時隔年で
行われていた東京大会に出られ、歌評を求められた時、
「ええ~、これどういう意味なの、誰か教えてよ~」
と言っておられたのを耳にして、ほっとしたことがきっかけ。
問題は、意味が分かって、そのうえで、どう評価すべきか
分らないときである。今月の歌会にはそんな一首があった。

帰国の機中泊で、伸びた爪をミリで測っている、という歌。
この歌を読んだ時、爪が伸びている、ということに、心が
引っかかってしまったのだ。私は特に潔癖症と言う訳ではない。
清潔を目指してはいるが、かなりぼんやりした性格だから、
あちこち、抜けているはずである。でも、爪だけは・・・・。
伸びている状態が、とても苦手なのである。まあ、一種の
先端恐怖症、的なものだと思うけれど。

そこが気になって、歌を集中的に読めない。だめだ、こりゃ、
と思ううちに「海外旅行には爪切りを持ってかなくちゃ」
なんて、頓珍漢な発言をしてしまい、さらに、焦った。

「爪の伸びたさまに、旅行の終わりを感じている」とか
そのくらいの発言はできたはずだな、と歌会終了間際に思ったが
もう後の祭りである。歌会はこれだから、怖いのである。

昨日の朝刊を読んでいたら、伊藤理佐さんのエッセイに
「オレ(私)って、いい人」的な発言について書かれていたが。
その「発言」のなかに
「爪の白いとこ無いくらい短くないと気持ち悪くて」
という、ご自身の発言も披露されていた。本当は
「オシャレもしないですみません」のノリのはずなのに発音は、
「わたしって、いいひと」的だったと。
ああ、それそれ、と私も思った。あの自分の発言に、自ら
落ち込んでしまったのは、「偽善的だったな」という感覚。
まだまだ、批評についての、修業が足りない・・・・。

さらに言えば、歌会では票を入れているのだが、ほんの短い
時間内(15分くらい)の読み込みで投票するので、わかりやすい歌、
共感できる歌、批評しやすい歌に票が集まる傾向が強いこと。
今回は票が入っていなかったけれど、良い歌もあった。
とても地味な素材を扱っていたり、場面が見えにくかったりすると、
どうしても敬遠されがちである。
反省と自戒と。年頭の歌会の収穫。
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