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折々の作家・本多勝一 [文学]

本多勝一という作家の、いわゆる「探検三部作」という存在を
私に知らせてくれたのも、八十年代の初めころに同僚だった
Kさんだったように記憶する。彼女が最初に読んでいたのは
『アラビア遊牧民』だった。私が「それ、どんな本?」と
尋ねると、さらっと「ベドウィンについてよ」と言われた。
当時の私は、ベドウィンを知らず、なんだか、自分を
アホ、のように思えたことをちらっと覚えている。

面白くて、面白くて・・・というのも、私は当時、読む、
といえば、小説の類が圧倒的の多くて、ドキュメンタリは
ほとんど手にしていなかったから。この世に、こんな
興味深い分野があったのか、知らないでいて、損した、
と思われるくらいだった。

アラビア遊牧民のあと、ニューギニア高地人、カナダ
エスキモー、と続けて読んだ。いずれも抜群に面白かったが、
やはり一番面白かったのはアラビア遊牧民、だった。
最初に読んだから、かもしれないが、砂漠という場所の
珍奇さも大きく影響していたのではないか、と思う。
何しろ私は、日本でも有数の豪雪地、それも山間部で
育っているので、氷雪地帯であるエスキモーや、山間地である
ニューギニアには、親近感は湧くものの、物珍しさ、という点では、
アラビアの比ではないからである。

本多勝一の探検記を読んでから十余年後に、イスラエルを、
二十年後にサハラ砂漠を訪ねた。イスラエルでは遠くに
ベドウィンらしい人群れも見たが、現地のガイドが
「もめ事は避けたいので、近寄らないで」と言う。
本多の体当たりのルポの凄さを改めて思った。
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