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ゆるしの色 [短歌]

少し遅れて、「塔」一月号が届いた。このところ、
家族の問題でバタバタしていて、集中力に欠けてるなあ、と
自己分析しているところ。「塔」を読み始めても長めの文章が頭に
入ってこない感じ。とりあえず、例月の作品をあちこち
拾い読みしている。すると、こんな歌が目に留まった。

  むらぎもの心のような聴色(ゆるしいろ)あわいピンクとメモに書きおく
                      菊井直子
ああ、許しの色って、聴色、とも書くんだな、と改めて気づかされる。
平安時代の頃、禁色と呼ばれる色があった。身分の高い人しか身に着けては
ならない、とされる色で、私が知っているのは深紫、とか赤、黄丹色とか。
禁色に対して、誰にも許されている色があり、それを許し色、と呼んだ。
赤とか紫などの淡い色である。作者の菊井さんは、「淡いピンク」と
メモしておいた、と言う歌。上の句が素敵な一首である。
「むらぎも」は、心にかかる枕詞。

「聴」と言う字は「聴す(ゆるす)」とも使うんだなと知ったのは
数年前。「人の言うことを聴かないやつ」とか、よく言うけれど、
つまりは「心を許さない」という意味が含まれるらしい。
面白いな、と思っているうちに一首浮かんだことがあった。

  半顔を夕陽に染めつつ綿雲がふいにささやく「聴してはだめ」
                        岡部史

菊井さんの上記の一首もそうだが、私のこの歌も
「許」を使っては、台無しになってしまう歌である。
許可の許では、事務的過ぎて、ここはやはり、何か人間の
湿度の高い感情がまつわりついているような、「聴」でなければ。
 
  

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