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ギュスターヴ・モロー [藝術]

日本でよく知られている西洋の画家、たとえばマネ、
ルオー、マティス、ゴーギャン・・などなど。彼らのほとんどが
主に油絵具を使って絵を描いている。日本人の間では、西洋画、
イコール油絵、という感覚が強いのではないだろうか。

以前から絵を見るのが好きで、美術館などには結構よく
訪れる方だったけれど、自分で絵を描いてみようと思う前には、
絵を見る、ということはすなわち画家の描いた色彩や形を見る、
ということに過ぎなかった。どんな画材を使っているか、何に
描いているか、などと言うことにあまり注意を払ってこなかった。

それで改めて手元の画集を色々めくってみると、西洋画家の中にも
好んで水彩絵の具を使っていた人たちがいたことに気がついた。
その代表的な画家の一人が、ギュスターヴ・モローである。

モローの特別なところは、油彩も同時に使いながら、水彩の方に、
やや軸足をかけている点。構図も色使いもほぼ同じ絵を、油彩と
水彩の両方で描き残している。だから、モローの絵を見ると、この二つの
画材の相違点を実に明確に知ることができるのである。

例えば「オイディプスとスフィンクス」。油彩は1864年、水彩は1882年と、
制作年にかなり隔たりがあるが、その構図はほぼ同じである。油彩は
色調が重々しく、特に人間の皮膚の肌理は、リアルな感じがする。
水彩はその辺りは淡いが、画面が明るく、空や岩肌に強いリアリティが
感じられる。でも、私が手にしているのはあくまで印刷物。
印刷による限界はかなり大きいはず。実際はどうなんだろう。

実は二十年ほど前、パリに出かけたとき、私はラ・ロシュフーコーに
ある、モロー美術館にも足を運んでいるのである。四階建てのその建物は
かつて、二、三階が居住部分、四階がモローのアトリエだったという。
亡くなる直前、モローは家全体を自作の展示室に改造している。
大好きなモローの絵をたくさん見られて幸せだった記憶はあるが。

当時は油彩と水彩の違いも判らずに見ていた。
残念なことしていたなあ、と思うのである。
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