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烏蘭浩特 [旅]

中国の北部の街・長春で暮した十数年前。
現地で知り合った知人が、黒竜江省のハルピンと
内蒙古にある烏蘭浩特(ウランホト)に旅行しよう、と
誘ってくれた。ちなみにその知人Fさんは、黒竜江出身。
内蒙古にも知り合いが住んでいる、とのことだった。

内蒙古へは、西側の省境の街・白城(バイチュン)から
バスで行く。白城のバスターミナルに行くと、公共の
バスもあったが、近くにマイクロバスも止まっていて、
その運転手らしい男が、「ウランホト! ウランホト!」と
叫びながら乗客を募っていた。バスにはすでに数人の
客が載っているのが見える。Fが聞くと
「もうすぐ発車する、運賃は〇元」とのこと。
公共バスよりも早い出発の上、運賃は半値らしい。

それで、そのバスを使うことにしたのだが・・・。

乗り込んでも、運転手はさらに「ウランホト、ウランホト!」
と乗客獲得に余念がなく、一向に出発する様子が見えない。
三十分、四十分と時間が経ち、向かい側の公共バスはもう
出発してしまった。周りの客も苛立っているはず、と思うと、
以外にものんびりとお菓子なんかつまんでいる。見ると、
一人は心を病んでいる人のよう。もう一人は、体に障害が
あるらしかった。お互いに話している所を見ると、
知り合いのよう。そして運転手とも・・・。

嫌な予感がしてきた。もしかすると、このバスはいつまでも、
ここで乗客を待つふりを続けるのではないだろうか。
私たち以外は、そのためのサクラなのでは・・・。
そのうちに待ちくたびれて、
私は少し眠ってしまった。そうしてウランホトに
行く夢を見た。小さな祭りのような町だった。
不思議な土産物屋が並んでいる。でも、売っているのは、
ただの石ころだったり、風の缶詰だったり・・。
呆れて廻りを見渡すと、売っている人も
歩いている人も、みんな顔が羊だった・・・。

と、Fさんに揺り起こされた。
「降りよう、こんなバス、いつ発車するかわからない!」
外には夜のとばりがおり始めていた。バスの窓が汚れまくっていて、
気がつかなかった。もう、次の公共バスを待っている時間はなかった。
「タクシーで行こう!」
払った料金はもう戻らない。それはそうなのだったが・・。

タクシーで着いたウランホトは、凄く近代的な町で、
舗装路は広く、どこもすっきりと清潔そうだった。
夢で見たウランホトは、どこにもなかった。 
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