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ビアトリクス・ポター・さらに [読書]

ピーターラビットは、世界で最も有名なウサギ、
と言っていいほど、ポターの絵本は多くの人々に支持されたのだが。
ポターもまた、ウサギのピーターに劣らず、なかなか
興味深い人生を生きた人だ。

彼女は1866年ロンドンの、裕福な家に生まれている。
学校には通わず、家庭教師と保母(ナース)によって教育され、
両親とさえ、一日に二度、朝晩の挨拶を交わすだけ、という
現代から見ると、かなり特異な境遇に育っている。

友人もまったくなく、五歳年下の弟が一番の遊び相手、
さらにウサギやハツカネズミなど、様々なペットを飼っていた。
幼少期から絵を描くのに熱中していた。

おそらく、より細密で完全な絵にするためだろう、
動物を解剖したり、剥製を作ったりしていたという。
さらには、煮込んで骨を取り出し、骨格の標本を作ったことも
あるのだとか(『ビアトリクス・ポターの生涯』福音館書店)。
あの愛らしいピーターを描き出すために、随分なことを
していたのだなあ、と驚かされるのだけれど。

実際に動物の絵を描こうとすると、顔を描くだけなら
さほど難しくはない。だが、全身像は、かなり技術を要す。
専門に絵を描いている人は「骨格を捉え、そこから
肉付けするように描かかないとリアルな絵は描けない」と言う。

ウサギのピーターは、ポターの家庭教師だった女性の子供のために、
ポターが絵葉書に描いた絵がもとになっている。
ポターは、印刷機の購入の資金を稼ぐために、家庭教師の子供たちから
一度は送った絵葉書を返してもらい、商品用に仕立てている。
それが意外に評判が良かったことが、絵本へと
展開するきっかけになったようである。

ポターが絵本作家として活躍していた時期は意外に短い。
最初の出版が三十代後半、と遅かったことや、
動物を描くのは得意でも、人間を描くのはかなり
不得手だったことなども、その原因だったようだ。

絵本の編集と出版を請け負っていてくれたウオーン社の
男性と親密になり、親の反対を押し切って婚約するのは三十代の
終わり。だが、その男性は婚約一か月後に急死している。
生涯の伴侶と出会うのは、その数年後のことになる。
はた目には、寂しい人生だったようにも映るのだが・・・。。

ピーターが稼いでくれた印税は、ポターが力を入れていた
自然保護運動の方へ回され、ポターが愛したイギリスの湖水地方の
美しい景観を守っているという。素敵なことである。
私は、これからじっくりと、ピーターラビットのお話を読むつもり。
ピーターと一緒に育ったのよ、と言っていた友人を思い出しながら。
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