SSブログ

シャーロック・ホームズ・さらに [読書]

楽しみながら読んできたちくま文庫版のホームズ全集、
とうとう第十巻にたどり着いてしまった私。
十巻目もまた、後半部、全体の三割くらいが「資料編」
になってしまっている。日本で出版されたホームズに関する
「書誌」が大半を占めていて、そのことにも圧倒される。
世界中にホームズファンは大量に存在するが、日本にもまた、
と改めて気づかされることになったのだ。

ホームズ作品を短歌に詠み込んだ歌人もいて、
  
  寒き椅子離るる深き外套に「緋の研究」つつみもてるも
                    葛原妙子『薔薇窓』

この歌を初めて読んだ時、ホームズの作品とは思わなかった。
私はなぜかホーソンの『緋文字』のように思えてならなかった。
深い外套に隠されたのはアメリカの「『倫理』の仮面をつけた
『魔女狩り』的小説」、と思い込んでいた時期がある。

ホームズの作品としては『緋色の研究』として覚えていたし、
はっきりとした書名ならカギかっこでくくるべきでは、と
思っていたからである。でも、塚本邦雄の『百珠百華ー葛原
妙子の宇宙』を読んで、これがホームズ作品と知って驚いた。
葛原が、そして塚本もまたホームズにも傾倒していたのだ、と想像したら、
何とも楽しくなったのだった。その一方で、外套に包まれた
小説が「緋の文字」だったら、どうだっただろう、
これもまた面白かったかも、とも思えたのだった。


冒頭近くで相棒はホームズの大ファン、でも私は結構好き、
とやや差をつけて書いた。私は実はホームズの、明快すぎる
ところがちょっと、という面があるのである。推理小説なんだから、
論理的種明かしは必須で、それがなければ読者は怒るだろう。

でも、私は、明快すぎると面白みも半減する、という気がする。
勝手な読者心理かもしれないが。そんなこんなで、私が一番
好きなホームズ作品は、さほど熱心に読んだわけでもなかった
子供の頃も、もう全作読破を目前としている今も、
『バスカヴィル家の犬』なのである。あのホラー的雰囲気が
ホームズ世界を真っ向から裏切っている感じがたまらなく好きなのだ。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0