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短歌のことば [短歌]

歌会をしていると、時々、
「こういう言い回し、変じゃないですか?」
と、訊かれるときがある。短歌に独特の言葉の使い方、
というのが確かにあって、古い言い回しだったり、
文語だったりと、種々あるけれど、とにかく現代の
口語ではほとんど使わない表現が多々あることは確か。

たった31文字で組み立てなければならない、という
制限のため、端的に表してくれそう、となると
少々古くても、耳慣れない言葉であっても、私は使ってしまう。
いや、わかりすぎるより、何か引っかかりができて、
立ち止まって考えるための、堰のような部分ができるのも
面白いかな、と積極的に使う。

最近、歌会でこんな歌を詠んだ。

  刃を平めそぎ落とし行く薄蒼き側線 長き魚の耳なり
                        岡部史

ところが、ある会員から「平め」って、何ですか?
表記が間違っている?と、質問された。
これは動詞「平(ひら)む」の連用形なのだが、そもそも
「平む」という動詞をご存じなかったらしい。長く短歌を
詠まれている方だったので、少々驚いた。のだが、しかし。

  かがやく黄と透りくるまでジャムを煮る翅を平めしやうに坐りて
                       盛岡貞香

十数年前、この歌に出会わなければ、この動詞を知らないまま
だったかもしれないのである。この歌を読んだ時、私はたちまち
「平む」ということばに感応し、長いことどこかで使いたいなあ、
と思っていたのだった・・・。
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