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折々の俳優・西島秀俊 [映画]

「押し」をめぐる人々の心情や行動を描いた小説が
話題になったりしている昨今。私が高校に入学した頃は、いわゆる
グループサウンズの最盛期で、同級生の中には鞄の中に着替えを
用意し、放課後そのままGSのコンサートに出かける、そして
会場の出口でお気に入りの歌手が出てくるのを待つ、いわゆる
出待ちをする、という人も少なからずいた。私には、理解できない
行動だったが。

ちょっと気になった俳優なら、思い浮かぶ人が一人だけいる。
出ているとちょっと注目してみる、という程度だが。
それは、西島秀俊。1995年公開の映画『蔵』で、蔵元の娘、
烈(演じたのは一色紗英)の相手役、涼太を演じていた。当時は
二十代の前半で、すでにテレビドラマには何度か出ていたらしいが。

私はこの時に初めてこの俳優を知った。そして記憶に留めるきっかけと
なったシーンを鮮やかに覚えている。こういう経験はほとんどないのだが。

主人公烈は造り酒屋の一人娘。舞台は新潟で、父の郷里でもあるので、
雪景色とか、祖父母が話していたそのままの越後弁とか、
なつかしくて見入ってしまったのだったが。
蔵元のところに手伝いに来ていた少年の涼太は、
次第に目が不自由になっていく烈を、列車事故から救ったことが
ある。その時は、涼太、烈ともに子役が演じていたが。

再会したとき、烈は涼太に向かってどんな大人になったのか、
興味を持つのだ。でも、もう見ることはできない。それで、おずおずと
近づきながら、「触ってもいい?」と問いかけるのである。

この時の涼太を演じる西島の表情が、素晴らしかったのである。
若い女性が近づいてきて、自分に触れようとする。照れ、戸惑い、
居心地の悪さを感じる一方、何か、自分の奥の感情をくすぐるものを
感じる。その表情から、涼太が烈にどんな思いを抱いているのか、
見ている人に感じさせる、そういう演技だった。
この俳優さん、かなりうまくなるのでは、と私はその時思った。

この十数年、凄い活躍ぶりで、ちょっと驚いているのだが。
映画「ドライブ・マイ・カー」も評判を呼んでいるらしい。
「蔵」を見てから二十五年以上経つ。もう一度見てみようか、と思う。
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