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折々の漫画家・こうの史代 [藝術]

こうの史代という漫画家をアニメ「この世界の片隅に」で
知った、という方は多いのではないか。私もそのひとり。
広島出身の漫画家であり、「セカスミ」以外にも原爆に
絡む作品として「夕凪の街・桜の国」がある、となると・・・。
イメージとしては、社会派なのかなあ、とも思ってしまうが。

漠然とそんな風に思い、そこそこの興味の対象でしかなかったのだが、
偶然古書店で彼女の初期の漫画を見つけて購入、読み始めて、
思わずのけぞってしまった。むむむ、こんなにイメージが覆された
という経験は、最近したことがなかった。

手にした作品は、『長い道』である。かっこばかり付けている
ダメ男と、ひょんなことから結婚することになってしまった女。
相手がああなら、こっちもこう、みたいな? ふわふわととりとめのない
生活していて、その味わいがなんとも面白く・・。

例えば、男の方は女が子供を欲しがることを怖れている。同居の家政婦
くらいにしか考えていず、宝くじにでも当たったら、すぐに離縁して
自分好みの我儘でカッコいい女を捕まえよう、とか思っている。
だから女が「やっぱり、何か生き物を育てたい」と言い出すと「すわ」と身構える。
で、ペットでいいと聞き、胸をなでおろすのだが。
なんと、女が育て出すのは、カビ、とか細菌みたいなもの・・・。

男の態度や素行は、いかにも、ありそうだ、と思える。だが、
そういう男に対峙する女の受け方が普通じゃない。
そこがこの漫画の面白いところで、私はたちまちのめり込んでしまった。

さらに「ぴっぴら帳」「こっこさん」などのペットモノ、といっても
いずれも鳥だが(セキセイインコと鶏)などを読んだ。「長い道」に
共通する意外性と、人を食ったようなお惚けに充ちている。
絵も、決してうまくはなく、でも、内容に合った、ほよほよ系?

「セカスミ」からはかなりかけ離れた世界が広がっていて、
これが何とも楽しかったのだった。

こうの史代は、広島大理学部を中退していて(だから、菌を
ペットにするなんて発想もあったのか?)、「長い道」系統の
ギャグマンガ系で出発。でも広島出身なんだから、と編集者に
勧められて、原爆を題材にした作品を手掛けるようになったらしい。

このことが、漫画家としての彼女の名声を高めることになったわけだが。
「こっこさん」や「ピッピラ帳」もいいよ、というか、
ぜひ多くの人に味わってほしい、そして癒されてほしい、と思える
作品である。
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